本書は、がっついたビジネスパーソンや学生を念頭に置いた実践書だ。最近は、大学でも「すぐに役立つ事柄」すなわち実学を重視する傾向が強まっている。成果主義、弱肉強食の競争が加速している中で、実務に役立たない教養などに時間を割いても無駄だと考えている人も少なくない。しかし、それは間違いだ。すぐに役立つような知識は賞味期限が短い。
何の役にも立たないように見える教養こそが、中長期的視点からは、役に立つのだ。筆者は、キリスト教神学という、まったく役に立たない知識を大学と大学院で身につけた。教養を身につけることは神学研究の大前提になる。若い頃に教養と真面目に向き合う習慣をつけたことが、外交官になってからソ連崩壊を正確に予測すること、さらにロシアの政治エリートに人脈を構築する上で役に立ったし、また鈴木宗男事件に連座し、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕された経験を持ちながらも、その後、社会的に復活することができる武器になったと思っている。
この武器を読者とも共有したいと思い、本書を上梓した。
二〇一五年六月二十三日
(「まえがき」より)
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