2012年春。4月。いよいよ、というか、とうとう、というか。 出産まで一ヶ月という段になって、お腹が急激に大きくなり、その大きくなるさまは、自分のからだとはいえ、ちょっとひいてしまうほどであった。「最後の追い込みが、きっついで」とこれもまた何度も耳にしていたことではあったけれど、じっさい体験してみると、知識と実践のギャップは今回もやっぱりすごかった。赤ちゃんの位置が明らかにぼこんと下にさがり、そして前のほうににゅうんとせりだして、横向きになって鏡でみると、もう、何かの間違いというか、ギャグというか一発芸というか、スヌーピーの横顔みたいなんである。
「この大きさまじでウケる」
「やっばこれって見れば見るほど超ウケるよな、あべちゃんこの大きさ見てみてすごない超ウケる、意味不明すぎて」
「見て見てこれこの角度、ふだん卵大の子宮がこんな大きさになってんのってアハハハどれくらいまじって超ウケる」
気がつけば鏡を見ながら妙なテンションになっていて、黙ってあいづちをうつあべちゃんに、最初から最後までウケるとしか発言していないのだけれど、そのテンションとはうらはらに、見れば見るほど頭の中のどこかが白~くぼやけてゆくような恐怖もあって、それを直視するのがこわかった。それは「アハッハ、なんて笑ってるけどおまえさん。このお腹に入ってるものは、必ず出さねばならないのだよ。しかもあんな小さなところから。一ヶ月もしたら。嘘でも冗談でもなんでもなくってね!」という、宣告というか、事実というか。
それは暫定的ではあるけれど、予定日というのが決定した、というのもおおいに関係があったと思う。
日にちが決まるって、容赦ないよね。お腹の赤ちゃんはこのころで推定2300g~2400g(2週間ほどまえの検診で、ちょっと体重の伸び悩みの時期というのもあって落ち込み、大いに悩んだわけなのだけど、これには誤差もあるから心配しないでいいと言い聞かせて乗り切った)という大きさで、一ヶ月というのは、なかなかにリアリティのある数字だった。あっとうまだ。ほんとうに、その日がやってくるのだな。