- 2012.03.21
- 書評
<『東大合格生のノートはかならず美しい』コラボ秘話>
ノートも本もITには負けない
文:森川卓也(コクヨS&T社長) ,文:太田あや(インタビュアー)
『東大合格生のノートはかならず美しい』(太田あや 著)
ジャンル :
#趣味・実用
九月の下旬に刊行される『東大合格生のノートはかならず美しい』は、著者・太田あやさんがコツコツと集めた二百冊もの受験生のノートを詳細に分析し、公開した異色の参考書だ。サイズはもちろんノートと同じ。ノート術を覚えてから偏差値が30から80にアップした受験生、塾にも行かないで現役合格、部活で県大会に優勝しても現役合格……と、お金持ちの子女しか東大に行けないという「世の哀しい常識」を覆す内容。 それだけではない。この本をヒントにコクヨがノートを開発した。授業の内容がわかりやすく美しくとれるノート、名付けて「ドット入り罫線(けいせん)ノート」。本とほぼ同時期に発売される。本とノート、近いようで遠かった商品のコラボについて、コクヨS&T社長・森川卓也さんに太田あやさんがインタビュー。
──「東大生ノート」のアイデアを現場からはじめて聞かれたのはいつごろでしょうか。社長として、そのアイデアをどうお感じになったのでしょうか。
森川 聞いたのは二月ごろだったでしょうか。実は、最初からこれだっと思っていたんです。私たちにとっては、ちょうどいいタイミングで、ヒントをいただいたんです。
元々、コクヨは、いつでも・どこでも・誰にでも買っていただけることを目指して、事業を進めてきました。その結果、無意識に我々の商品を選んでもらえるくらいになりました。しかし、これからは、それだけでは通じないと考えています。個別のお客様のニーズにあったものを作る。すなわち、不特定のマス顧客ではなく、明確な個の客=個客にむけた物を作ろう、と社員に向けて発信している最中でした。
その昔は十人一色であったことを、十人十色、いや、これからは一人十色、百色に対応したモノ作りが必要です。しかし言うは易く、行うは難い。コクヨのDNAには、マスを意識して商品を考えるという遺伝子が色濃くあります。そんなDNAを持った社員が、「個客を意識しろ」と言われても、どんなモノを作ればいいのかイメージできなかったと思います。
そのような状況で「東大生ノート」の話を聞き、これこそ、まさに個客のニーズにあわせたモノ作りだと思いました。とても分かりやすく、しかも盲点を突いていました。
これまでも、広くお客様の声を聞いて商品を作るという側面はもちろんありましたが、特定の強いニーズにフォーカスすることに、改めて気付かされたアイデアだったと思います。
正直、「東大生ノート」という発想は、百年たってもコクヨ単体からは出てこなかったでしょう。