- 2014.09.18
- 書評
あの大企業も1%以下の負担率
消費税を上げる前に
法人税制のゆがみを正せ!
文:富岡 幸雄
『税金を払わない巨大企業』 (富岡幸雄 著)
出典 : #文春新書
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
これらの背景には、企業がアメリカナイズし、短期間で大きな利益を得ようとする風潮があります。もはや、大企業にとって税は、「コスト」という感覚なのでしょう。日本の法人税が高すぎるから、海外と競争できないといって、法人税の法定正味税率を、「数年以内に20%台まで引き下げる」と、政府に公約させることに成功しました。
この法人税の引き下げで、財務省は代替財源について、頭を悩ませていますが、結局は、消費税のさらなる引き上げに加えて、国民に負担を強いるような増税策しかないようです。
財界や政府は、庶民が納める消費税を増税して、グローバル競争をしている巨大企業に対する法人税を減税しようと計画しているように私には思えてなりません。それというのも、消費税引き上げと、法人税の引き下げには、過去に次のような関係がみられるからです。
1989年に3%で創設された消費税は、1997年には5%、そして今年2014年4月からは8%になりました。さらに来年2015年10月には、10%の大台へとアップさせようと、安倍政権は目論んでいます。
それに対して法人税率は、1984年に43.3%だったものが、1987年には42.0%に下げられ、消費税が導入された1989年には40.0%、1990年には37.5%、その後、1998年、99年と下げられ、2012年には25.5%まで引き下げられてきました。そして、いよいよ来年2015年からさらなる引き下げを始めようとしているのです。法人3税の1989年度から25年間の累計減収額は、255兆円。同時期の消費税収の累計は、282兆円です。
この事実は、消費税増税が、社会保障の充実のためでも、財政再建のためでもなかったことを立証しているのではないでしょうか。これまでの巨額の消費税収のほとんどが、法人税の減収の穴埋めに消えてしまっているようなものです。
税制に潜在している伏魔殿のベールを暴き、欠陥税制を正すために、税金を払っていない著名企業の実名を明かすという「禁じ手」まで私が冒したのは、税に70年以上携わってきた者としての使命感からでもあります。来年10月の消費税再増税にストップをかけ、法人税の税率引き下げではなく、「再建」を、これからも主張していきます。
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