2014.10.19 書店の謎

なぜ値引きがない? 売れ残った本は?
出版流通の仕組みについてお答えします

文: 「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、出版流通の仕組みに関連する質問に答えてもらいました。

本はどこから仕入れるんですか? また仕入れた本はどのタイミングで店頭から消えるんですか? (長野県 10代 男性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 大部分は取次という問屋から仕入れます。ときどき著者など直接仕入れることもあります。本が消えるタイミングは(1)売れたとき(2)委託契約期間満了(3)盗まれたとき(犯罪)が主な理由です。(1)がもっとも幸せですのでぜひ本屋で買ってください。

 

富田結衣子(文教堂書店代々木上原駅店)

 時々、取次を通さずに直接出版社さんから仕入れることもあります。書店の仕入れの独特なところは、ほとんどの商品が委託販売という形での仕入れになるところです。委託販売とは、出版社や取次から、書店が預かって販売をする代わりに、ある程度期間が経っても売れなかった商品を返品できる、というシステムのことです。毎日新しい本が出版されて入ってくるので、その本を並べる場所を作る為に、書店はその都度返品する商品を決めています。分かりやすい例ですと、雑誌などは新しい号が発売になると、残った前の号と入れ替えて前の号は返品になります。

 

「委託販売」という言葉が出てきましたが、本の流通で特徴的なもう一つのキーワードが「再販売価格維持」です。

本の値段は定価で決まっているが、なぜ値引きできないのか? (長崎県 60代 男性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 再販売価格維持制度によって本の定価が守られています。基本的に同じ価格での競合となるためポイントカードやイベント誘致、限定拡材などで他書店との差別化をはかっております。

 本や雑誌の値段が「価格」ではなく「定価」と記載されているのも、それによるものです。再販制の対象となるものは、雑誌、書籍の他に、新聞、音楽CD、タバコなどがあります。

売れ残った本はどうする?

本屋さんでは、売れ残った本はどうしているのですか? どんどん新作が出てスペース上 必ず売り場から外す本が出ると思うんですが……。(茨城県 30代 女性)

富田結衣子(文教堂書店代々木上原駅店)

 書店の仕入れの仕組み上、ほとんどの商品は委託という形で預かって販売しています。ですので、残った本は必要な数を残して返品という形で取次さんに送り返しています。ただ、あまりにも返品をたくさん出してしまうと、新刊の入荷数を減らされてしまうので、コミックに関しては前の巻の売り上げ数などを見て、なるべく返品を出さないように希望数などを出したり、チェーン内の他店で欲しいお店に送ったりしています。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 多くの商品は委託販売制度にもとづき陳列していますので、残念ながら売れ残った商品は出版元に返品をします。売行きは落ちていても新刊点数が増え続け……販売期間も短くなっていく現状です。本屋で気になった本を見つけたら、迷わずに購入ください。

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 出版社に返品します。返品できない商品であれば、棚から外し、倉庫で保管します。例えば5年たっても売れない本というのが在庫であったとすれば、それはその地域のお客様にとって不必要な本であると思います。その分野の定番書籍というものもあります。そういった本は滅多に売れなくてもなるべく棚に残すように配慮します。他の本よりも長いスパンで販売年月を測る、という意味です。返品する、と申し上げましたが、何とかして売り切る努力をする、というのは大前提です。棚の商品の並べ方を変えてみる、新刊で関連書籍が発売されれば併売してみる、世の中の話題に合わせて別の部門の棚に移動させてみる、など、展開方法をあれこれ試行錯誤するのは当たり前の販売努力です。それでも売れなければ、返品します。

 

雑誌が好きでよく購入をするのですが、売れ残った月刊の雑誌はどうするの? 最近の雑誌はふろくがついているので、ふろくの行方も知りたいです。(福井県 30代 女性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 残念ながら売れ残った雑誌は発行元に返品されます。雑誌はそのまま断裁されることが多いと聞きます。ぜんぶ売れればいいのですが。付録は基本的には、本誌との連動で契約によって成立していますので、こちらも残れば返品もしくは処分となります。許可があれば、一部は読み聞かせ会のお土産として再活用することもあります。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 本誌は出版社に返品しています。ふろくは、当店では破棄しています。勿体ないことですが、お客様はふろくも欲しくて購入してくださるので、全て分別して破棄することにしています。捨てるときは「すまん!」と言うようにしています。物を捨てるのが苦手なもので……。

【次ページ】取り寄せの出来ない新刊がある?



こちらもおすすめ
書店の謎お客様に元気をもらった。 書店員の感動接客体験(2014.09.16)
書店の謎本屋さんのおすすめ本はどうやって決まっている?(2014.09.12)
インタビュー・対談著者 × 書店員トリオ ネタバレ座談会──千早 茜・内田俊明(八重洲ブックセンター)・新井見枝香(三省堂書店)・川俣めぐみ(紀伊國屋書店)(2014.06.11)
書評大切なことはすべて子どもたちに教わった 絵本作家かこさとしさんが川崎を再訪した日(2014.09.05)