インタビューほか

公開対談
綿矢りさ×道尾秀介
小説家は幸福な職業か?

第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL(別册文藝春秋 2014年5月号より)

第150回を迎えた芥川賞・直木賞を記念して行われたフェスティバルでスペシャル対談が実現! 普段から親交のある綿矢りさ・道尾秀介の二人が、賞の垣根を越えて語り合った「小説家」という職業の醍醐味とは――

書きつづけることの不安

芥川賞作家×直木賞作家の組み合わせはめったに見られない

綿矢 では私から質問。作家という職業において、将来についてどんなプランを持っておられるのでしょうか。他の職業と違って、なかなか将来をはっきり見定めるのは難しいところもあると思いますが、不安はないのでしょうか。

道尾 書きたいから書いているだけで、先のことは考えられないですね。書きたいと思っているうちは書きつづけたいなと思っていて、たぶん依頼がこなくなっても、書店に並べてもらえなくなっても、書いてるんじゃないかなと思います。

綿矢 メリットばっかりではないと思うんです。道尾さん、それだけ読書がお好きなのに、書いてるとそのぶん読めなくなりますよね。それでもずっと書いていくだろうと思われますか。

道尾 僕、作家のポンコツになりたいんです、スクラップにはなりたくないけど、ポンコツにはなりたい。

綿矢 なるほど、ポンコツとスクラップのニュアンスの違いはわかります。

道尾 ストーンズは知ってます? 「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」って曲があって、It’s Only Rock’n Roll.But I Like It. ただのロックンロールだけど、好きなんだ、って。

綿矢 はい。

道尾 その歌がすごく好きで、小説を書いていて迷いそうになると、その歌を思い出すんです。

綿矢 結局、好きってことですね。

道尾 そうです。綿矢さんはどうですか? 今後のプランは。

綿矢 私も書いてはいきたいんですけど、本来、本を書いてなかったらこういう性格でこういう人生を歩んでたかなというものが、本を書くことですごく変わったと思ってるんです。私、17歳のときから書いてるんで、その変化が怖いんですよ。本を書いてなかったらどうしてただろうと時々思うこともあって、働いてたのかなあとか、結婚してたのかなあとか、考えます。

 人生プランが仕事によって変わってしまうのは誰にでもありうることだと思うけれど、性格ですよね。自分の考え、思想とかも、小説を書いていることによって、無意識のうちに自分の中で曲げて、センセーショナルにしようとか、みなさんに面白がってもらおうとか思って、変えてしまってるんじゃないか。それは本当に怖いです。書くのは好きですけど、そこには恐れもあって、逆に自分がどうなっていくのか見てみたいという気もするけれど……。

道尾 依頼がなくなっても書く? それだけ怖さがあっても。

綿矢 (なくなっても)いつかまた来るさと思いながら書くかもしれない。

道尾 依頼がきたら「もうできてますよ」みたいな?

綿矢 誰かが原稿を落としたり(笑)、伊佐坂先生みたいな人が「ダメだ! ピンチヒッターが必要だ」ってなったときに、「そういえば綿矢ってやつがいたな」って思い出してもらえたら(笑)。

【次ページ】雪だるまの生まれる瞬間

別册文藝春秋 2014年5月号

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