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ショートケーキ、シュークリーム…『西洋菓子店プティ・フール』に登場するお菓子を探して

ショートケーキ、シュークリーム…『西洋菓子店プティ・フール』に登場するお菓子を探して

文:瀬戸 理恵子 (フードエディター・ライター)

『西洋菓子店プティ・フール』 (千早茜 著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『西洋菓子店プティ・フール』 (千早茜 著)

 人々においしい笑顔と幸せを届けてくれる、スイートなお菓子の世界。でも、いざ向き合ってみると、そこにあるのは決して甘さばかりではないことに気付くはず。きゅんと切ない甘酸っぱさや、心をチクリと刺すようなほろ苦さもあれば、ときには涙のようなしょっぱさも。さらに深いところを探れば、パティシエの真っ直ぐでひたむきな信念や、職人の厳しい世界を思わせるぴりっとした緊張感も押し寄せ、心を大きく揺さぶるのです。

 この物語に登場するのは、そんなさまざまな味や色、香り、食感、思いが入り混じった、魅力あふれるお菓子の数々。千早さんの細やかな描写を読むだけで、鮮やかなお菓子が目の前に現れて香り立ち、口いっぱいに味が広がっていくよう! 五感を大いに刺激されて、物語にグググッと引き込まれてしまいます。

 舞台は、下町にある洋菓子屋「プティ・フール」です。店主のじいちゃんがつくるのは、ショートケーキやシュークリームといった昔ながらの洋菓子。一方、ともに厨房に立つ不器用で真っ直ぐな孫娘・亜樹がつくるのは、フランスや一流店で身に付けた、キレのあるフランス菓子。一見、じいちゃんの菓子は野暮ったく、亜樹の菓子はハイレベルに見えるけれど、次第に亜樹はじいちゃんの菓子のすごさに気づいてしまうのです。それは、理論やレシピを超えた、長年の経験から繰り出される味の深さと、どんな人をも無条件に包み込んでくれるような温かさ。2人の人生や人柄が映し出された対比のあるお菓子に、それを食べる登場人物たちの人生や心情もさらに重なって、その味は“おいしさ”を超えたより深いものに。読み進めるにつれて、心の奥底で息を殺していた何かがうずき出すのを感じ、すぐにでも物語に登場するお菓子を食べて、癒されたい気持ちになってしまいました。

 フードライターという職業柄、私は取材を通じてさまざまなパティシエやお菓子に出会います。そのたびに、お菓子にこめられた思いや人生、ストーリーを知り、胸が熱くなるのです。この物語を読んで味わったのも、同じような思い。登場するお菓子を実際に味わいながら、みなさんもぜひ、“おいしさ”の先にあるお菓子の魅力を体感してください。


※2016年取材時の情報です。

「トリアノン」生シュークリーム

生シュークリーム(¥310 税込)

 地元・高円寺の人たちに愛され続ける、1960年創業の洋菓子店。昔ながらのシュー皮に、軽やかな生クリームのみがたっぷり絞り込まれ、かぶりつきたくなる懐かしい味わいです。

東京都杉並区高円寺南4-26-12
03-3315-1451
http://trianon.co.jp/

 

「マッターホーン」ショートケーキ

ショートケーキ(¥400税込)

 レトロで洗練された1952年創業の洋菓子店。きりりとした鋭角三角形のショートケーキは、ふわふわスポンジと国産イチゴ、生クリームがマッチ。王道のおいしさに、伝統と職人の誇りが感じられます。

東京都目黒区鷹番3-5-1
03-3716-3311
http://matterhorn-tokyo.com/

 

「オーボンヴュータン」プティフール フリアンディーズ

プティフール フリアンディーズ(12個入り ¥1,750税抜)

 フランス菓子の真髄を追い求め、伝統の味を作り続けるパティシエ、河田勝彦氏。宝石のように並ぶプティフールは、力強く凝縮された味わいで、香り華やか。熟練の技と感性に圧倒されます。

東京都世田谷区等々力2-1-3
03-3703-8428
http://aubonvieuxtemps.jp/

 

「アンプリル」ピュイ・ダムール
「ピエトロ・ロマネンゴ」ローズジャム

ピュイ・ダムール(¥380税込)

 岡田峰幸氏がつくるピュイ・ダムールは、香ばしいアメ、コクのあるカスタードクリーム、ほろほろのパイが絶妙のバランス。シンプルで見た目も地味ながらはっとさせられるおいしさです。

 物語のように一緒にバラのジャムを味わいたいならば、「ピエトロ・ロマネンゴ」のローズジャムを。上品なバラの香りが豊かに花開きます。

「アンプリル」
東京都足立区谷中1-5-3 パークサイド新家 1F
03-5849-3372

「ピエトロ・ロマネンゴ」取扱い⇒
「ノンナアンドシディ ショップ」
渋谷区恵比寿西2-10-6大槻ビル102
03-5458-0507
http://www.nonnaandsidhishop.com/

「パリセヴェイユ」フォンダン ショコラ オ グリオット

フォンダン ショコラ オ グリオット(¥600税込)

 フランスさながらの趣漂う、金子美明氏のパティスリー。温めたフォンダン ショコラにフォークを入れると、甘酸っぱいグリオットチェリーと入り混じってチョコレートが流れ出し、キルシュがふわりと香ります。

東京都目黒区自由が丘2-14-5 館山ビル 1F
03-5731-3230
*イートインのみ。バレンタインや桜の季節など不定期で登場。グリオットなしの「フォンダン ショコラ」(\450税込)は通年販売。

「ル サロン ジャック・ボリー」パティスリーコンチェルト

パティスリーコンチェルト(2種¥2,400、3種¥3,200税込・サ別)

 物語にも登場するワゴンデザートの醍醐味を楽しめる、エレガントなカフェ キュイジーヌ。ヴァシュラン、イル フロッタント、ラム酒のサヴァラン、パリブレストなどが味わえます。

東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店本館4F
03-5363-5688
http://parlour.shiseido.co.jp/lesalon/

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瀬戸理恵子│フードエディター・ライター

瀬戸理恵子

慶応義塾大学文学部卒。銀行勤めの傍ら、ル・コルドン・ブルー東京校にて菓子ディプロムを取得。2000年パリへ渡り、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリ(上級)で菓子ディプロムを取得。「オテル・リッツ」を皮切りに、「レストラン・コロヴァ」にてピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、『料理王国』、『料理通信』の雑誌編集に携わる。2009年より、スイーツを中心としたフリーのフードエディター・ライターとして雑誌や新聞、書籍などで執筆。編著に『東京手みやげ 逸品お菓子』(河出書房新社)、『「オーボンヴュータン」河田勝彦のフランス郷土菓子』(誠文堂新光社)、『パティスリーエーグルドゥース 味の美学』(柴田書店)、共著に『東京最高のパティスリー』(ぴあ)など。

文春文庫
西洋菓子店プティ・フール
千早茜

定価:748円(税込)発売日:2019年02月08日

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