インタビューほか

<対談>家入レオ×千早茜「嘘がない自分を受け入れたから、見えてきた」

別冊文藝春秋

電子版30号

<対談>家入レオ×千早茜「嘘がない自分を受け入れたから、見えてきた」

 千早さんの小説『男ともだち』を読んで、主人公・神名葵に激しくシンクロしたという家入さん。自意識過剰で、でも自分にちゃんと期待している女の子。家入さんがそんなにも彼女に惹かれた理由とは――?

 写真と言葉でたっぷりお喋りした、二人の時間をそのままお届けします。


家入 今日、本当に楽しみにしてきたんです。

千早 こちらのセリフですよ! 家入さんが書いてくださった『男ともだち』の書評を読んで本当にびっくりして……。なにせタイトルが『男ともだち』だし、男女の友情という部分にどうしても目が行くと思うんです。でも、家入さんは、主人公のイラストレーター・神名葵自身に着目してくださった。そんなひと、初めてでした。

家入 そうなんですか! 意外です。だって、あれはやっぱり神名の物語だから。

――産経新聞の書評で家入さんは、「(彼女は)描いて、描いて、描いて必死に未来をつかもうとしているイラストレーター」であり、「神名葵もわたしも真っ赤なドロドロを抱えている自分をただ肯定して生きたいだけなのだ」とお書きになっていました。

家入 そうなんです。この物語には、神名の大学時代の先輩ハセオだったり、同棲相手や愛人、いろんな関係の男性が出てきます。そこで育まれる関係ももちろん興味深いんです。でも、やっぱりこれは自意識過剰で、同時に自分にちゃんと期待している女の子のお話だと思った。そして、それは私もまったく同じだから、シンクロせずにはいられなかったんです。

千早 うれしいです。

家入 小説を読み終わったときに、久しぶりに小学生のときのことを思い出して。当時、テレビで「モーニング娘。」のオーディション番組を放送してたんです。それを見て、「この子たち、一生懸命何かを掴もうとしてる。自分と同じぐらいの歳の子がこんなに頑張ってるのに、私は何やってるんだろう」って無力感に囚われて、一日中涙が止まらなかったんですよ。

千早 その頃からひと一倍感受性が豊かな子だったんですね。

家入 自意識過剰ですよね(笑)? でもやっぱり、自分にはちゃんと期待しなきゃダメだと思ってました。期待して、信じて、行動してみる。もちろん、すぐにうまくいったりしないし、そもそも私、上手に笑えないし、誤解されやすいし、全然ダメじゃんって自分を不甲斐なく思ったこともあります。でもだからこそ、神名が美穂に言われたセリフがもう……。

千早 あ、書評に書いてくださっていたところ!

家入 そうです。自分は「そつなく生きてるから」っていう女ともだちが、神名にかけてくれた言葉。「あなたは不器用なの」って。「でも、だから、一番大切なものが残る。それが何かちゃんと知ってる。前に自信って言っていたけど違うわ。あなたが持っているのは信念。きっと、最後には行きたい場所に行けるわ」って。震えました。丸ごと全部、千早さんに肯定してもらった気がして。どんなに不器用でも、いまの自分で生きていこうって思った。一生忘れないと思います、この言葉。

別冊文藝春秋からうまれた本

西洋菓子店プティ・フール千早茜

定価:本体650円+税発売日:2019年02月08日

男ともだち千早茜

定価:本体680円+税発売日:2017年03月10日

別冊文藝春秋 電子版30号(2020年3月号)文藝春秋・編

発売日:2020年02月20日


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