- 2015.05.19
- インタビュー・対談
キャパの人生を追う旅。
もしかしたら、これは僕の最後の大きな旅かもしれない
「本の話」編集部
『キャパへの追走』 (沢木耕太郎 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
あまりにも名高い「崩れ落ちる兵士」や「ノルマンディー上陸作戦」など数々の傑作を残した伝説の戦場写真家、ロバート・キャパ。沢木耕太郎さんは、永年その生涯を追い続けてきた。いわばその集大成が新刊『キャパへの追走』だ。
――本作は、司馬遼太郎賞を受賞した傑作ノンフィクション『キャパの十字架』(文藝春秋、2013年)の姉妹編と位置づけられていますね。
流行の表現をすればスピンオフとでも言うのでしょうか。でも、どちらが「原作」ということでもなく、「キャパへの旅」の中で双方の探究が互いに深め合うものになったように感じています。
『~十字架』は「崩れ落ちる兵士」が撮られた丘で何が起きたのか、タテ軸で深く掘り進んでいった、謎解き的な部分もある話です。それに対して『~追走』は広がりのある「移動の物語」で、生涯旅する人だったキャパを追った紀行の物語という面が強いですね。
――キャパが世界中で撮った写真の現場を探し求めて、同じアングルで撮影し、並べて見せるというユニークな構成。訪れた場所は40か所以上に及んでいます。
彼の実質デビュー作でトロツキーを撮ったデンマーク、青春を過ごしたパリ、スペイン内戦、ニューヨーク……ヨーロッパに5回行き、アメリカには2回、世界一周も1回しましたからね。1か所ごとに書いていた月刊「文藝春秋」での連載が、足かけ4年以上になってしまいました。
もともと80年代にリチャード・ウィーランという人の書いたキャパの伝記を翻訳して以来(『キャパ その青春』、『キャパ その戦い』、『キャパ その死』、ともに文春文庫)、僕のキャパへの関心には30年の歴史があるんですが、「崩れ落ちる兵士」についての疑問がずっと心に引っかかっていた。
あれは本当に撃たれた瞬間なのか、本当はあの丘で何が起こったのか……。いつか納得したいと思いながら、何か自分を衝き動かす契機がないままに先送りにしていました。
けれど縁があって連載の話があり、連載という「枠」をつくってキャパの旅を追ってゆけば、その「幻の丘」にたどり着けるんじゃないかと。自分に締め切りを課したわけです(笑)。
結局、幻の丘がなかなか確定できなくてその話はエピソード1話に到底収まらず、キャパへの旅全体もこうして長大なものになって、それぞれが1冊ずつの本になってしまったのですが。
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