ラジカセブームの中学時代
五條 子どものころの秋葉原って、どんなでした?
石田 そのころは、白物家電と音響機器がすべてなんですよ。ぼくたち、中学生になってすぐにラジカセブームというのがやってきましてね。ラジカセでエアチェックする。で、そのためのテープを買いに行くというのが毎月の仕事だったんです。すごいエアチェックをしてたので、TDKのSAというカセットテープを一ダースずつお小遣いで買ってきては録音するわけ。どこの店が安いか、足を棒のようにして探しましたからね。そんなふうにずーっと通っていたなじみの街を舞台に何か書けるというのは、楽しいですね。
五條 ええー、三十年前からの構想ですか? じゃあ『大菩薩峠』だったのか、これは(笑)。
石田 小説に登場する迷彩服の戦闘美少女は、五條さんがモデルなんですよ。
五條 アキラさん、いいですね。コスプレと格闘技で、時代にぴったりじゃないですか。作品の中であの人がいちばん動きがあって、ことを起こすときのきっかけに必要ですね。
石田 あのアキラは書いていてすごく楽しかったですね。強くてきれいで健気で。
五條 話の終わりがきれいでいいですよ。私、後味の悪い小説はすごく嫌いなので、ああして希望をもたせて終わるというのは、すごくいいと思いました。
キャラ的にはもちろんアキラという非常に動ける子もいいんですが、それをとりまいている男の子が、社会に順応できないおたくでも、他人を傷つけて生きているのではないという設定が、非常に可愛らしくてよかったですね。
『池袋ウエストゲートパーク』もそうですけど、こういうおたく系の男の子を書くときというのは、非常に生き生きしてますよね。ものすごくビジュアルも浮かぶし、気持ちも入れられる。つきあいたくはないけど、友達にこういう男の子がいてもいいかなと。
石田 あ、つきあいたくないんだ。
五條 きっぱり、つきあいたくありませんよ、私は(笑)。
――確かに六人の若者たちは、ひどい吃音だったり、ひきこもりだったり、不潔恐怖症だったりで、みな現実社会に対しては適応障害をもっていますね。それがネットを通じて知り合い、連帯感で結ばれていく。
石田 ああいう、ちょっと病気の子を書くのが好きなんですよ。病気だけど、明るく前向きみたいな。で、自分の弱点みたいなものが裏返って、あるときすごくいい切り札になったりする。そんな状態の少年たちを書くのは好きですねえ。みんな頑張れよ、という気持ちになるんですよ。
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