宮下さんが、家族といっしょに死亡していたかも知れない事件とは
宮下 『神さまたちの遊ぶ庭』(光文社)はエッセイなんですけれども、子供たちの話がたくさん出てきて、ちょっとゆるやかな子育て論みたいな部分にも触れていますね。北海道の新得町トムラウシという場所が舞台です。
石本 北海道の地図を持ってきました。北海道をくるくると回すとしたら、重心に来るところにトムラウシという場所があります。
宮下 そうなんです。もうちょっと上に富良野があって、そこは北海道の「中心」を名乗っていて、それで新得は「重心」って思いついたみたいですね。そういう話を聞きました。
大雪山国立公園の中に家族で1年間住んでいたときの話を書いたのですが、読んで面白いって言って下さる方ももちろんたくさんいらっしゃるんですけれども、すごいと驚いたり、自分には絶対出来ませんと言う方もいらっしゃいました。
石本 ほんとうに面白い話で、普通に都会に住んでいたら分からないというか、絶対に体験出来ない話がたくさん入っています。たとえば、もしかしたら今ここに宮下さんいなかったんじゃないかという事件があって……。
宮下 トリカブトの! ご存知でしょうか、トリカブトってヨモギとそっくりなんですよ。住んでいる家の前にばーっと一面にヨモギが生えていて、これでヨモギパンを作ろうと思って摘もうとしていたところに仲良くしているお隣さんがちょうど来て、「宮下さん、それ触っちゃだめだよ」「えっ?」「それヨモギとそっくりだけれど、違うから」って。それがトリカブトだったんですよ。トムラウシではトリカブトって普通に自生しているんです。
石本 猛毒?
宮下 そうなんです。そしてきれいな青い花まで咲かせて、無害どころか美しい花なんですよ。土地の人はみんな知っているから手を出さないんですが、私たちのような新参者は、トリカブトなんて知らないですから。でも、実は、葉っぱにも茎にも根にも毒があって。
石本 その時、もしお隣さんが止めてくれなかったら、ヨモギと思って作ったトリカブトパンを家族みんなで食べて、ここに宮下さんいなかったかもしれないですよね(笑)。
宮下 そうですよねえ(笑)。
石本 そういう命の危機も超えながらの面白いお話がいっぱいです。また、子供たちが楽しいですね。それぞれ仮名で出てくるんですけれども。漆黒の翼くん。
宮下 そうそう、漆黒の翼は当時中学に上がったばかりでしたが、今はもう高校1年生になって。長男が高3で、次が高1、3番目の娘が中1なんです。もともと仲良かったんですけれども、このすごく濃い1年を家族で過ごしたことで、今も楽しくやっているんじゃないかなって。
石本 あの1年ですごく成長したというか変わりましたよね。それから、“ワンさぶ子”の由来も分かって(笑)。
宮下 幻の犬として脳内に飼っている“ワンさぶ子”という犬が出てくるんですけれど、福井に帰った時に、脳内にいたはずの犬を「いたっ!」って実際に見つけて飼い始めたんですね。
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