インタビューほか

幻のデビュー作『静かな雨』発売。『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞して変わったことは?

「本の話」編集部

『静かな雨』 (宮下奈都 著)

『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞した宮下奈都さんのトークイベントが10月23日に名古屋で開催されました。本をキーワードに街を盛り上げるブックマークナゴヤの一環として開催されたもので、会場には熱心な読者50人が詰めかけました。聞き手は、ジュンク堂書店ロフト名古屋店店長の石本秀一さん。

本屋大賞を受賞して、変わったことは?

石本 この後は、会場からの質問に答えていただきたいと思います。「本屋大賞を受賞された前と後で書きたい小説の変わったこと、変わらないことがあれば教えてください」。どうですか?

宮下 本屋大賞、直木賞も含めてなんですが、宮下の小説にはドラマがないとすごくいわれていたので、ドラマがないものを書き続けてやると思いました(笑)。日常の日々を書き続けたいと思います。

石本 別にそれで問題ないと思うんですがね。大きなドラマばっかりだと疲れますよね(笑)。本屋大賞を受賞されて半年くらい経つと思うのですが、よかったことと、逆に困っちゃったなということはありますか?

宮下 困ったことは、県内での購読率がとても高い福井新聞に本屋大賞を受賞した写真が掲載されまして、犬の散歩をしているときなんかでも「あれっ? あの人……」ということが時々起こるようになって、犬の散歩にはとても気をつけるようになりましたね。「ああ、宮下さん家の犬がそこで……」ってならないように、すごく気を遣うようになりました。

石本 宮下家の愛犬というと、ワンさぶ子?

宮下 そうです(笑)。それから、美容院に行った時に、シャンプーの後にタオル巻いてもらった状態で「お疲れさまでした~」ってシャンプー台から移動している時に、「あれ? 宮下さんですか?」と言われて、「やだ~」と思いました(笑)。「なんで分かるの~!」って。今まで、そんなことなかったので…。

石本 お名前を知ってる方は多くいらしたと思うんですけれど、お顔までは知らなかったということですよね。逆に、何かサービスしてもらえるとかそんなことはないですか?

宮下 それはあんまりないです。それに、サービスしてもらって「ありがとう」ってやっぱり言えないです(笑)。そこは「払います」って言うし。

 よかったことは、こういう言い方をしたらなんですが、話が通りやすくなりました。ここにある『僕らにとって自由とはなんだ』(リットーミュージック)は、Nothing's Carved In Stoneという私の好きなロックバンドの写真集なんですが、ライブを観に行って「楽しい、嬉しい、好き」っていう気持ちを感想文みたいに書いていたものを、バンドの人が目にとめてくれて、すごく面白いからもっと読みたいといってくれて、私も書きたいという気持ちで形になったものなんです。高校の同級生にポール・マッカートニーやジェフ・ベックやレディー・ガガ等のロックアーティストを撮っている写真家の堀田芳香がいるんですけれど、このバンドをデビューした時からずっと撮っていて、その彼女の写真と私の文章とでこういう1冊が作れたという、これは「本屋大賞」をいただいたから出来たことなんじゃないかと思います。たぶん今までだったら、「Nothing's Carved In Stone、大好き!」って言っても、なかなかそこから本にはつながらなかったと思うんですけれども。

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