デビュー作『静かな雨』に『羊と鋼の森』の原点が
石本 最後に新作というか新しい本を宣伝しておかないと(笑)。
宮下 12月12日に『静かな雨』という小説が文藝春秋から出版されます。これは12年前に「文學界」という文芸誌に応募して新人賞の佳作を頂いたことで、デビューが決まった作品です。幻のデビュー作って自分で言っていいのか分からないですが(笑)。ちょっと独特の感じの作品なので、それと合うような内容の作品を他にも書いて、それと合わせて1冊の本にしましょうとずっと担当編集者の方に言って頂いていたのですが、1作だけの本になりました。
初校を戻したばかりなんですが、びっくりしました。10年ぶりに読み返してみたら『羊と鋼の森』に出てくるフレーズみたいなのがもう入っているんですね。「うっそー!」って思いました(笑)。
石本 『羊と鋼の森』の頃にはそのことは忘れていたんですか?
宮下 完璧に忘れていましたし、出てくるシチュエーションも違うんです。何かいいものをイメージした時に、匂い、季節、時間、それぞれ好きなところが出て来ちゃうんだなというのが分かりました。セリフでも、ああ、恥ずかしいっていうくらい今も同じようなことを書いているなあと思いました。稚拙なところなんかはちょっとだけ直しました。その時のものをあまり直してはいけないのかもしれないのですが……。
石本 どこまで直すかというのは難しいですよね。
宮下 そうなんです。最小限のつもりで、許せない部分は直したんですけれども。
デビュー作というのは、詰まっているんだな、自分が出ちゃっているんだな、隠しようがなかったんだなと思いました。
クリスマスのプレゼントにいいような感じと担当編集者は言ってくれています。「僕はすごく好きです」と言ってくれたので、私もそれを信じて好きな本として出したいなと思っています。みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。
石本 今日の会場にいらした皆さんの予約で、もうここで50冊売れたということで(笑)。
宮下 ほんとに!? そうなると嬉しいですね(笑)。ありがとうございます。
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