2014.10.12 書店の謎

子どもだけじゃない、大人も泣ける絵本
書店員がお勧めします

文: 「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、大人でも泣ける絵本、感動する絵本を御紹介します。

私は3歳になる娘と、毎晩寝る前に一冊絵本を読んであげる事を習慣にしています。いざ絵本を読んでみると、子供の頃には分からなかった感情が出てきて、感動すると同時にポロポロ涙が出てきてしまいます。あらためて絵本の素晴らしさを知ったのですが、書店員の皆さんが大人になってから感動した絵本は何ですか? 書店員さんの感動した絵本をぜひ読んでみたいので、ご回答お願い致します! (岡山県 20代 女性)

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 私も小学生と保育園の男の子がおります。読み聞かせは、自分も楽しいですし、子供も喜ぶので幸せな時間です。昔読んだはずの絵本でも、今改めて読むと、あ! こんな絵本だったのか! こんな読み方もできるのだな、など、気付かされることが多いです。ベタかもしれませんが、『花さき山』『泣いた赤おに』『ごんぎつね』でしょうか。感動というよりは、昔とは違うせつなさを覚えるように思います。子供の頃には分からなかった感情、というお言葉には非常に共感します。『姥捨て山』などは、(まだちょっとはやいかもしれませんが)親として感情移入してしまいます。昔話に感動することが多いかもしれません。

 

富田結衣子(文教堂書店代々木上原駅店)

 大人になってから読み返すと、絵本の素晴らしさが本当によくわかりますよねー。一冊に絞るのはとても難しいのですが、私は『泣いた赤鬼』(浜田廣介・著/各社より)です。

『ないたあかおに』(浜田廣介・文/池田龍雄・絵/偕成社)。ほか複数社から刊行されている。

 子供のころは青鬼はとても優しいのにかわいそう……というかなんで赤鬼が泣くのだろう、泣きたいのは青鬼じゃないのかな? と思っていましたが、赤鬼が悲しいのもなんとなく解る気がする、なんだかうまく説明できない哀しい絵本でした。
 大人になって改めて読んでみて、最後の青鬼の手紙のところで号泣しました。赤鬼の目線で見開きいっぱいに描かれたメッセージには、ただただ青鬼の優しさと赤鬼への思いやりが込められていたからです。一生懸命書いた不揃いな文字からもそのことがよく読み取れます。
 そのことに気が付いたと同時に大切な、こんなにも自分のことを思い行動してくれていたかけがえのない親友の、言葉にはしなかったけれど 本当は淋しかった気持ちに気付かなかったこと、そして恐らくもう二度と会えないであろう事に気付いて、とてもとても大切なものを失ってしまったことに気が付いて、赤鬼は泣いたのだ、と今は思います。
 子供のころにはわからなかった感覚だけれど、これが私の「切ない」という感情の原体験になっていたのだな、と改めて気付かされました。今でも思い出して書いていて泣きそうになります。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 先日、本棚を整頓していて『泣いた赤鬼』を読みました。子どもの頃は鬼が嫌いで怖くて泣いていた思い出しかなかったのに、青鬼の優しさや赤鬼の寂しさが伝わってきて、今までの自分の経験も加わって感動の涙が溢れました。絵本が語り継がれる理由は何となく分かっているつもりでしたが、「あぁ、絵本って素晴らしいな」と実体験から感じた日でした。
『りんごがひとつ』(ふくだすぐる・著/岩崎書店)もお子様がいらっしゃるのでしたらぐっとくると思います。ひとつのりんごを色んなどうぶつたちが取り合うんですが、一匹のおサルさんが一人占めして逃げるんです。それには理由があって……。子を守る親とは、何てあったかいのだろうと思い心揺さぶられた一冊です。『おじいちゃんがおばけになったわけ』(キム・フォップス・オーカソン・文 エヴァ・エリクソン・絵/あすなろ書房)も、もう言葉でませんでした。絵本大好き!

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 絵本ではなくイラストエッセイですが、おーなり由子さんの、『Love Letter 』(大和書房)を激オシします。2002年刊の単行本ですから、棚に残っていない店も多いかと思いますが注文してぜひお読みください。最初、納品の山から赤い表紙を見つけて読んで倉庫で号泣。買って帰って読んだ奥さんも号泣。愛おしい純粋な気持ちが、見事に結実した傑作です。クリスマスやバレンタインのギフトにもぜひ。
 

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