アガワは「すきま産業」
――やはり週刊誌という性格上、生ものであるわけですか。
生ものを目指すようにしてます。まあ、実際は必ずしも生ものとは限らないし、ページに穴が開く恐怖がありますから、ある程度妥協せざるを得ないこともありますし。
――いつも見事にホンネを引き出してますよね。
そんなことないですよ。失敗したケースもあるんです。すごく憧れていたのにうまくいかなかったとか、なんとなくそのときの波長が合わなかったとか。私の準備不足のせいだったこともあるだろうし、私があちらに気に入られなかったこともあるだろうし……。
――いまではインタビューの手練(てだれ)とされていますが、この対談をはじめる前はいかがだったんですか。
いや、テレビでもそうでしたが、インタビューがうまくいったためしがないし、一度もホメられたことがなかった。巻頭インタビューを『PHP』でやったり、慶応義塾大学に『塾』という雑誌があって、塾出身のお偉方にお会いする大変真面目なインタビューをやったり、『とらばーゆ』という雑誌で会社の女性活用について伺うというインタビューをしたことがあったんですね。
――でも、べつに貶(けな)されもしなかったんでしょう。
でも、『とらばーゆ』の仕事をクビになったときにね、打ち上げの会をやったんですよ。そしたら、インタビューをまとめてくれていたライターの男性に、「阿川さんのインタビューはけっしてうまいとは言えない。だけど、嫌われないんだよな、キミは」って言われたの。つまり、それだけだったんだって思いました。そのあとに何かの女性誌でやってたときも、ベテランの物書きおばさまがまとめてくださっていて、最後の最後のときに厭味を言われたの憶えてます。「ほんとうにご迷惑かけました」って言ったら、「ほんとにね」って(笑)。
――それは、まとめづらいとか、あるいは内容がないとか、どういう意味だったんでしょうか。
インタビュー自体の趣旨がわかってなかったんですね。このインタビューで大事なことはこれとこれで、少々枝葉に逸れたりしてもこっちの内容を膨らませるべきだとか。ところが、私の興味はあらぬ方向に膨らんでいくんですね。
――相手を制御できなかった?
制御できないだけじゃなくて、わかってなかったんですよ、何を聞くべきかを。でも考えてみると、私が起用されたのって当時は「すきま産業」だったんだと思うんですね。
――すきま、ですか?
つまりインタビュアーを誰にしようかというときに、あんまり若いタレントじゃビジュアルはいいけど質問はできない、女優さんは名があるけどコントロールがなかなか難しい、アナウンサーにはいろんな規制があるだろう、その「すきま」が私だったんです。ギャラも高くないし、プロダクションにも入ってないし。それと、ま、見た目、ちょっと知的に見えるっていうの?(爆笑)
――いやいや、たいそう知的に見えます。それで、『週刊文春』の最初の頃はどうだったんですか。
死にそうでした。たとえば三回目の曙関。場所は巡業先の横浜の小さなビジネスホテルで、部屋はシングルだったかな。曙関の隣に座って、テレビがつけっぱなしなの。曙関はテレビを見ながら私の質問を受けるわけ。聞くことのひとつひとつがこれでいいのだろうかと、こっちはビクビクしてるのに、私に目もくれずにテレビを見てるから、もう私は泣きそうなんですよ。
――少しは身を入れて答えてよ、といいたいですよね。
でも怖くてそんなこと言えないし。それで日本語がすごくお上手ですねって言ったら、「そんなの当たり前じゃん、日本にいりゃあすぐ上手(うま)くなる」って。私は一年間ワシントンに住んでたけども、ろくに喋れないって言ったら、「英語喋ってみな」と。で、ひとこと喋ったら、「ハッツオン悪いなぁ、お前」って言われて、みんなドッと笑ってんの。つまり曙関はビビリまくってる私をからかって遊んでらしたのね。だから、対談としてはとても面白かったし、曙関はすごく親切に話してくださったって皆が言うんだけど、私だけが震えまくってた。
――でも、そういう阿川さんの様子が、徐々に一種の「味」みたいになっていったんじゃないでしょうか。
そういうことはあるかもしれないですね。ダメなアガワというイメージがついて、私自身も楽になっていったし。だって、次の対談はこの人ですって言われて、「この人の本は少しは読んでますか」「一冊も読んだことない」「この世界は知ってますか」「全然わかんない」っていうのを編集部に通いながらやってたんですね。そのうちに、阿川佐和子は何も知らないということが流布されていって、「タイトル変えたら? 『阿川佐和子の一から教えて』にしたら?」とかね(笑)。ニュースキャスターやってたわりに、何にも知らないやつだなっていうのを、編集部が遊び始めたところがある。
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