- 2015.08.11
- インタビュー・対談
若き松本賞作家が生み出す前代未聞の和風ファンタジー、最新作刊行でシリーズ18万部突破!
「本の話」編集部
『空棺の烏』 (阿部智里 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
舞台は、山神によって開かれたと伝えられる世界「山内」。登場するのは、通常は人の姿で暮らすが、鳥の姿に転身して空を飛ぶことができる八咫烏(やたがらす)たち。朝廷に君臨する日嗣の御子と彼を守る武家の少年、貴族達の華麗な権力争いをテンポよく描き読者を魅了する阿部智里さんのデビュー作「八咫烏」シリーズ。この夏、4巻目の『空棺の烏』を刊行、累計18万部の人気シリーズに成長した。
――阿部さんは現在23歳。シリーズ1巻『烏に単は似合わない』で松本清張賞を受賞されたのが20歳の時で、史上最年少の受賞者でした。巻を重ねるごとに、実はこのシリーズには当初から奥深い哲学と考え抜かれた仕掛けがあって、壮大なストーリーだったことが明らかになりますね。
阿部 このシリーズの根幹をなす「山内」という設定を思いついたのは、高校2年生の時。まだ本として出版されてはいませんが、シリーズ5巻にあたる『玉依姫』を書いている最中のことでした。しかし、第1巻『烏に単は似合わない』のワンシーン、十二単衣を着たお姫さまがお辞儀をしている場面が頭に浮かんだのは中学2年生の時でしたから、作品世界の構想そのものは、かなり時間をかけていますね。私からすると、まずひとつの歴史――架空の世界で、架空の人物たちが活躍する歴史の流れが出来上がって、そこから面白そうな部分を抜き取り一作品にまとめている感じです。ですから、1巻だけを読んだ方には「なぜ八咫烏なの?」とよく訊かれるのですが、2巻3巻と読むに従って、だんだんと八咫烏でなくてはならなかった理由が見えてくるはずです。1、2巻はまだ序章。八咫烏の世界が恐ろしい敵に脅かされる3巻の『黄金の烏』がようやく起承転結の「起」で、『空棺の烏』が「承」。作者からすると、シリーズのクライマックスはまさにこれからなんです!
――最新刊『空棺の烏』では、宗家と御子を守る上級武官養成のための訓練所「勁草院」が舞台。そこでは、平民、下人、大貴族、武家と、身分の違う4人の少年たちの意識と才能がぶつかりあい競争する様が描かれています。苦境にある友を救いたい、でも救い方がわからない、と悩む大貴族の少年、彼が差し出した救いの手を相手は果たして受け入れるのかどうか。中盤の静かなクライマックスは、読む方もつい手に汗を握る(笑)素晴しい場面でした。
阿部 ありがとうございます。この話は一見すると「身分制度」とか「格差」というものがテーマに感じられると思うのですが、私が書きたかったのは格差そのものではなく、施す側の人間心理でした。何かをしてあげた、だから自分は感謝されて当然である、という強者の傲慢とでもいいましょうか。そういった感覚を私自身の中に見つけることがあって、直視して気持ちの良いものではないけれど、あえてそこを掘り下げてみようかと。
今回、作中で最も出来た人物として描いたのは、貴族連中にバカにされる庶民の少年でした。貴族の子は人間的にまだまだ未熟。だからこそ、『空棺の烏』は貴族の少年の成長物語でもあるんです。
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