2015.01.24 インタビューほか

この世界に惚れこんだ!
書店員が聞く『ブルース』の秘密

小板橋 頼男 (丸善書店・有明ワンザ店)

『ブルース』 (桜木紫乃 著)

昨年12月に刊行された桜木紫乃さんの『ブルース』。苛烈な境遇に生まれ育ち、やがて釧路の歓楽街の顔役となった男、影山博人と、彼をめぐる8人の女の物語です。聞き手は「オール讀物」掲載中から、この作品を追いかけるように夢中で読んでいたという丸善書店・有明ワンザ店の小板橋さん。熱いインタビューとなりました!

『レフト・アローン』が聴こえてくるような、感じで……

桜木 紫乃(さくらぎ しの)

小板橋 博人ははたちくらいのころ、アラン・ドロンにちょっと似てる、といわれたりしているし、ルックスがいいとは思うんですが、僕は、声もいいのではないかと想像したんですよね。

桜木 莉奈によれば、音程は外しますけどね(笑)。

小板橋 どの章かは、読者の方々に読んでいただいて確かめてもらいたいのですが、博人が「楽器が弾けたら」と語る場面、素敵でした。

桜木 あれは、私がエア・バンドを好きだから。ゴールデンボンバーが好きで、ずっと聴いていて。

小板橋 あのシーンのベースはそこでしたか!

桜木 この小説のラストのイメージはテレビドラマ『太陽にほえろ!』のマカロニ(萩原健一)とジーパン(松田優作)の殉職シーン。ひたすらそれを想って走りました!

小板橋 桜木さんらしい。では、たわいもない質問をひとつしてもいいでしょうか(笑)。『ブルース』にはたくさんの魅力的な女性が登場しますが、私、小板橋は、登場人物の女性のなかで誰がいちばん好きだと思いますか?

桜木 女性読者はまち子(博人と暮らす女)、圭(博人の幼なじみ)が人気ですけどね……誰でしょうね? 何だか今、ストリップ劇場の入口のように8人の女の写真が目の前にある(笑)。

小板橋 私が好きになったのは、主要登場人物の8人ではなくて、最終章に出てくる学芸員の女性なんです。逢いたい、と思いました。

桜木 彼女には思い浮かべていた女性がいるんです。某書店のKさん。もしかして伊達眼鏡ではないかと思ったことがあったんです。全く脚色して書いているので、ほんとうに印象だけですけど。

小板橋 そんな人物がいたとは、驚きですね。しかもKさんですか……。驚いたと言えば、表紙の写真に森山大道さん、帯の推薦文は壇蜜さん、この物語にふさわしくてすごくいいですね。

桜木 森山さんのお写真、壇蜜さんのお言葉、本当に嬉しいです。

小板橋 そういえば、タイトルや歌詞、店に流れるBGMとして、音楽が今回かなり頻繁に出てきます。懐かしい曲がたくさん登場して嬉しかったです。

桜木 小説の中で、ヒット曲を使うと空気感がだし易い、ひとつ出来あがっている世界を持ってきて、場を曲の色で染められるという効果もあげられるので、多用はどうかと思うんですが、好きな曲を入れられると、何となく嬉しいんですよね。

 実は、裏テーマの曲があるんです。装丁のデザイナーさんに「何か希望はありますか?」と聞かれたとき、私「『レフト・アローン』が聴こえてくるような感じで、お願いします」って頼んで。でも、それでいて、タイトルは『ブルース』でしょう。笑ってください。聴く音楽、かなり雑食なんです。歌謡曲、演歌、クラシック、ジャズ、ロック、何でも聴きます。

小板橋 前作『星々たち』では寺尾聰さんの『渚のカンパリ・ソーダ』が出てきて、嬉しかったなぁ。

桜木 それは良かった。同じ時代を生きてきた感じ、伝わったかな。

【次ページ】人が生きて死ぬまでの間の“欠落”と“過剰”

ブルース
桜木紫乃・著

定価:本体1,400円+税 発売日:2014年12月05日

詳しい内容はこちら



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