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この本はとても恥ずかしい本なのです

この本はとても恥ずかしい本なのです

文:大宮 エリー

『思いを伝えるということ』 (大宮エリー 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #小説

つまりお恥ずかしいのですが
この本はとても恥ずかしい本なのです
今も思っていることだったりしますから。
「生きるコント」という
実話からなるエッセイ本では
くすくす笑ってもらうエピソードを書いていて
これは人に渡すのは全然平気なのですが
この、「思いを伝えるということ」
という本ができたとき、
人に渡すのがとても
恥ずかしく、ためらわれ
実際、渡さなかったという‥。
出版されてから、だいぶ時間がたってからは
内容とかもぼんやりの記憶になっていますから、
けれど、文庫化にあたり、
いまいちど、読み直し、
大幅に加筆修正しました。
ばっさり削除したところもあります。
向き合い、そして、練り直しました。
知ってはいたんです、薄々。
あの時は、わーっと書いて、わーっと勢いで
出してしまったのですが、
いつかきちんと読み込むことがあるだろうとは
思っていました。
文庫化でこんなに直す人もいないと思うので
担当の児玉さんには大変な苦労をかけてしまいました。
本当にごめんなさい。
でも、児玉さんは、
「直してくださって、キラキラしてきました!」
とキラキラした目で言って
「この本はエリーさんにとって、とても大切な本ですから
大切につくりましょう」
と言ってくれて‥。
大切にしていたつもりはないんです、むしろ
赤裸々すぎて、厄介な本だと思っていました。
出しておいてなんですが、
読まないでくれたらいいとも思っていました。
ところが、発売してみたら、
色んな感想をいただいて‥。
「この本を毎晩読み返しています」
とか、
「アロマテラピストで、お客様にあった精油を
調合して差し上げるのですが、みなさん、この本を持ち込まれて
このような精油をつくってくださいと
言われるかたが多いです」だとか。
あとは、児玉さんに、
「私は、周りを傷つけているあなたへ、が一番ぐっときました。
エリーさんがさらけ出された感じというか。読んでいると、
自分で自分に向き合わざるをえなくなり
苦しくなったりもしましたが、
でも、最後に、ぎゅっと抱きしめられ、肯定され
あたたかい気持ちになりました」
実は、大切な友人に、とても哀しいことが
あったのですが、そもそも友人に読まれるのが
一番、この手のやつは苦手なのですが
そのひとは読んだみたいで、
ある日ぼそっとこう言ったのです
「たき火のやつと、周りを傷つけているあなたへ、が
よかった‥」
なんだか、その哀しい出来事を友人から聞いた後
この本をまた自分でどんなだったっけと読んでみて
友人の思いがそのときの辛い思いが
手に取るように分かって、
いたたまれなくなったというか。

【次ページ】

思いを伝えるということ
大宮エリー・著

定価:本体550円+税 発売日:2014年11月07日

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