かくて辰巳屋はおれんの定宿となり、そこを足場に妖刀探しが始まる――。
というわけで、本書『小町殺し』に入っていくと、今回も四話からなる連作集仕立てだが、話の続き具合からして連作スタイルの長篇と思ったほうがいい。
第一話「清元梅春」は『邪剣始末』から半年後、おれんは江戸に戻ってくるが、到着早々、大川のほとりで女の土左衛門の発見現場に立ち会うことに。女は絞殺後、川に放り込まれたようで、何故か左手の小指がなかった。女は元鳥越町の清元の師匠・梅春。おれんとも付き合いのあった、男出入りの多い美女であった。おれんは旧知の北町奉行所定町廻り同心・神崎兵庫とも再会、彼の手下の弥吉とともに梅春の住まいを訪れ、女中のおとよから梅春が美人画の絵師・喜志川桂泉の錦絵「艶姿五人小町」に描かれていたことを知らされる。
おれんは再び辰巳屋の世話になるが、梅春殺しが発覚した翌日、店に美女と見まがうばかりの美しい若者が訪れ、文三を虜にしてしまう。若者は翌日も店を訪れ、文三を遊びに連れ出す。若者は喜志川桂泉の弟子・玲泉であった。下手人の手がかりを求めて調べを続けるおれんだったが、やがて新たな事件が……。
その新たな一件については、おれんが真相を見抜くが、梅春殺しの下手人はわからぬまま、物語は第二話「桔梗屋おこん」へと続く。事件の半月後、文三と玲泉の付き合いは続き、梅春殺しの調べも続いていたが、手掛かりは得られていなかった。そんなとき、「艶姿五人小町」のひとり、船宿・桔梗屋のおこんが所用で辰巳屋を訪れる。その夜、おれんは桔梗屋で、仏具屋の大店「いと川」の隠居に呼ばれるが、おこんに執着する隠居は喜志川桂泉と玲泉に彼女の錦絵を新たに描かせようとしていた。だがその五日後、おこんは大川で絞殺死体となって発見される。梅春と同様、左手の小指が切り落とされていた……。
こうして事件は今でいう連続殺人犯――シリアルキラーによる猟奇殺人事件めいていくが、著者はそこに文三と玲泉の恋愛話(!?)や巾着切りおもんの掏った財布から小指が出てきた一件等を絡めて、第三話「但馬屋およう」へと話をつないでいく。
その第三話では、おれんは遊びに出た浅草で暴れ馬の犠牲になりかかった子供を救い、ケガをする羽目に。その子供・幸太は蔵前の札差・但馬屋利兵衛の息子だった。但馬屋は「艶姿五人小町」のひとり、おようの父親であったが、妻亡き後、女中のおりつと深い仲となり幸太を儲けたものの、おようが手代と祝言を挙げ店を継ぐまでは、そのことは内密にしようとしていた。だが、おれんの傷が癒えかかった数日後、幸太が何者かにかどわかされる事件が起きる。そしてさらに、三たび小町殺しが!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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