私は少し時間ができるとフラッと書店に行くんですが、そんなときに出会ったのが、三浦しをんさんの『舟を編む』です。書店でこの本を見たときに、ある人から勧められていたことを思いだして文庫を購入しました。新しい辞書“大渡海”を作る編集者、学者、営業マンたちの物語を読みながら、小さなことをコツコツ積み重ねていくのは大変なことですが、最後までやり遂げることの大切さを学びましたね。巻末についている主人公・馬締光也が林香具矢におくった“馬締の恋文”は秀逸でした。文章で人に気持ちを伝えるとは、まさにこのことだと。
HPを退社し、二〇一三年にボーズの社長に就任してから、「社員自らが考え、提案し、責任を持って行動できる環境づくり」を目指してきました。そのための共通テーマになればと思って、毎月、全社員向けに二回、直属部下向けに二回の計四回メールで文書を発信しているんです。私が社員全員と一対一で話せれば理想的なのですが、日々の業務の中で、それは難しい。一方通行になるリスクはあるけれど、私の考えを文章で伝えていこうと。ただ、文章を書くたびに“人に伝えることの難しさ”を痛感します。
伊集院静さんや椎名誠さんのエッセイも読みますが、文章が非常にお上手ですよね。作家の文章を読むと、“個性”を感じます。山崎豊子さんの重みのある表現。三浦しをんさんの優しい文体。読みながら、これは良いなと思って、模倣して書こうとするんです。結局は真似できずに自分の表現に戻ってしまうんですが、それでも、作家の文章を読んで、自ら文章を書く作業をしていると、思考が徐々に整理されていくんです。
自分の考えていること、伝えたいことをクリアにしていく必要があるビジネスマンには、読む、書くという作業が非常に有効だと思っています。みなさんも部下や友人宛てにメッセージを書かれてみてはどうでしょうか。
お勧めの3冊
・『欧州の路上で――異文化を知る旅』 (戸田光太郎 著) アルク新書 絶版
・『沈まぬ太陽』(アフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇 全五巻) (山崎豊子 著) 新潮文庫
・『舟を編む』 (三浦しをん 著) 光文社文庫
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どうしても書き残しておきたかった山崎豊子先生との歳月(前編)
2015.08.10インタビュー・対談 -
どうしても書き残しておきたかった山崎豊子先生との歳月(後編)
2015.08.11インタビュー・対談 -
山崎豊子は最後まで壮大な作品を発表し続けた
2013.12.16文春写真館 -
山崎豊子 『運命の人』
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映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念三浦しをん×大森立嗣緊張感と、心地よさ
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瑛太・松田龍平主演で映画化! 三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』
2014.09.19特設サイト
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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