書評

現在に通じる歴史上の教訓

文: 別宮 暖朗 (軍事史家)

『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』 (別宮暖朗 著)

 なぜドイツがベルギーに侵攻したかといえば、シュリーフェン・プランに従ったためであった。この戦争計画には、動員・集中・開進・作戦までの全てが時計の正確さで書かれていた。

 ドイツでは、皇帝が総動員を下令すれば、立ち止まることなく兵士は国境を越えていった。動員が即ち戦争を意味したのである。

 他国では、兵士が開進を終了させても、国境内に留まり、監視塔を立て、哨兵に国境を巡回させ、各級司令官は次の命令を待つことができた。政府は、その間、外交交渉を活発化させ、折り合う条件を呈示したのである。

尖閣、西沙諸島とクリミア半島

 戦争とは、ある一国が敵の戦力を殲滅しようとする交戦状態である。ただ「戦争と恋愛では何をしても許される」(セルバンテス『ドン・キホーテ』)とされるが、仕掛けた国がドンキホーテであることは争えない。

 尖閣諸島に公船を派遣し、南シナ海でベトナム漁船を撃沈する中国の姿はドンキホーテそのものであろう。かつてのムッソリーニのイタリア、ヒトラーのドイツ、松岡洋右の日本もあるいはドンキホーテであったろう。

 第二次大戦以降、朝鮮、中国、ベトナム、中東やビアフラで300万人以上の犠牲者を出した戦争や内戦が起きた。いずれも第一次、第二次大戦の経験がない所である。

 ヨーロッパ各国、日本、アメリカの交戦国は、戦争の歴史を学びドンキホーテを止めたのである。

 中国が尖閣諸島、西沙諸島に公船を出し、先制攻撃に出た。いずれも公海における海底油田掘削が目的であろう。資源と領有権を争いたいのである。

 ロシアがクリミア半島を占領した。ところがアメリカを除いてウクライナを軍事的に支援しようとせず、EU(英独仏伊)は1兆5000億円、日本は1500億円の金融支援を決めた。戦争より金で済ませた方が安いからである。

 中国は、大国を気取るが、実は幼稚な国である。先制攻撃に出ながら、「責任は全て相手側にある」との声明を繰り返すなど、呆れるより他にない。

 戦争とは、自らの意志と関係なく巻き込まれてしまうことがある。第一次大戦は、軍事同盟・集団安保を考える上での教訓に満ちていると言えよう。

第一次世界大戦はなぜ始まったのか
別宮暖朗・著

定価:本体780円+税 発売日:2014年07月18日

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