- 2015.07.04
- インタビュー・対談
鯖江では、400年前からオープンイノベーションやってます!
福田 稔 (日本ビジネスインキュベーション協会理事)
『福井モデル 未来は地方から始まる』 (藤吉雅春 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
大企業は誘致しない
福田 シリコンバレーでも、同じような構図があるそうですね。
藤吉 シリコンバレーや、中世から発展を続けるイタリアのボローニャなどは、「内発的発展」ができる都市です。よそから大企業を誘致せず、自分たちで技術を磨いて発展していく、この精神に尽きます。そして、鯖江がメガネや漆器、繊維で行ったのは、まさにオープンイノベーションなんですよ。みんなで技術を学んで、それぞれを独立させて競争させる、でも情報は共有する。
福田 世界の先端企業でいま盛んに言われているオープンイノベーションですが、鯖江では昔からやっていたわけですね。でも、市長、鯖江は「中国に最初にやられた町」だそうですね。
牧野 メガネ、繊維、漆器、この3つとも、すべて成熟産業なんですね。中国が改革開放で物づくりに参入してきたら、価格競争であっという間に席巻されてしまったわけです。そこで、新商品や新技術の開発へと向かいます。鯖江のものづくりの歴史は、素材開発の戦いでした。例えばメガネで言えば、最初は真鍮、次に赤銅、アルミ、ステンレス、チタン、マグネシウムと次々に素材を開発し、商品に付加価値を付けてきました。
そうやって生き残った企業はたくましいですよ。バブルの頃から比べると、それぞれの産業の事業者数は半減していますが、生き残った事業所一社あたりの平均出荷額は増えているんです。鯖江のメガネから始まったチタンの加工技術は世界一です。今は、この技術でウェアラブル端末としてのスマートグラス、そして医療用器具や航空宇宙産業までを視野に入れています。
市民は「顧客」ではなく「協働者」
福田 市長は、市民は顧客ではなく協働者である、という考え方だそうですね。
牧野 市民の方々は、行政サービスは与えられて当然、と考えています。でも、今はそんな時代ではありません。これほど行政へのニーズが複雑多様化しているなか、みんなが満足するには市民の皆様のお手伝いが必要なのです。だから、「顧客から協働者へ」、みんなの町はみんなで作りましょう、ということです。
いま、市民にお手伝いをして頂いている市の事業は、当初の17事業から38事業に増えました。行政の事業数は700から800くらいあります。私は、そのうち400ぐらいは市民がやってなんら問題ないと考えています。街づくりはそんなに難しいことではありません。「市を良くする」という目標は一つなのですから、そのために市民と職員、市長が情報を共有することが大事です。
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