インタビューほか

鯖江では、400年前から
オープンイノベーションやってます!

福田 稔 (日本ビジネスインキュベーション協会理事)

『福井モデル 未来は地方から始まる』 (藤吉雅春 著)

藤吉雅春さんの、地方再生をテーマにしたルポ『福井モデル 未来は地方から始まる』刊行を記念し、東京都中央区の八重洲ブックセンターで、対談とサイン会が開催されました(6月9日)。対談のお相手は、書籍にも登場する福井県鯖江市長の牧野百男氏。消滅可能性都市と名指しされる自治体が全国に広がるなか、人口が増えている理由は何か。起業家を育てるインキュベーターの草分け的存在である福田稔さんが司会を務めました。会場では、メガネの町・鯖江ならではのペーパーグラス((株)西村プレシジョン)の展示や、物産展(ちよだいちば)も行われ、賑やかに福井の雰囲気を盛り上げました。

大企業は誘致しない

藤吉 雅春(ふじよし まさはる)『ForbesJAPAN』副編集長
1968年佐賀県生まれ。「週刊文春」記者を経て、ノンフィクションライターとして独立。2011年に一般財団法人「日本再建イニシアティブ」の民間事故調「福島原発事故独立検証委員会」ワーキンググループ参加、共著に同財団の『日本最悪のシナリオ 9つの死角』。著書に梅田功名義で『変革者 小泉家の3人の男たち』など。文化放送『福井謙二 グッモニ』火曜日コメンテーター。2014年に創刊した『ForbesJAPAN』副編集長兼シニアライター。

福田 シリコンバレーでも、同じような構図があるそうですね。

藤吉 シリコンバレーや、中世から発展を続けるイタリアのボローニャなどは、「内発的発展」ができる都市です。よそから大企業を誘致せず、自分たちで技術を磨いて発展していく、この精神に尽きます。そして、鯖江がメガネや漆器、繊維で行ったのは、まさにオープンイノベーションなんですよ。みんなで技術を学んで、それぞれを独立させて競争させる、でも情報は共有する。

福田 世界の先端企業でいま盛んに言われているオープンイノベーションですが、鯖江では昔からやっていたわけですね。でも、市長、鯖江は「中国に最初にやられた町」だそうですね。

牧野 メガネ、繊維、漆器、この3つとも、すべて成熟産業なんですね。中国が改革開放で物づくりに参入してきたら、価格競争であっという間に席巻されてしまったわけです。そこで、新商品や新技術の開発へと向かいます。鯖江のものづくりの歴史は、素材開発の戦いでした。例えばメガネで言えば、最初は真鍮、次に赤銅、アルミ、ステンレス、チタン、マグネシウムと次々に素材を開発し、商品に付加価値を付けてきました。

 そうやって生き残った企業はたくましいですよ。バブルの頃から比べると、それぞれの産業の事業者数は半減していますが、生き残った事業所一社あたりの平均出荷額は増えているんです。鯖江のメガネから始まったチタンの加工技術は世界一です。今は、この技術でウェアラブル端末としてのスマートグラス、そして医療用器具や航空宇宙産業までを視野に入れています。

市民は「顧客」ではなく「協働者」

牧野 百男(まきの ひゃくお)鯖江市長
1941年福井県鯖江市生まれ。福井県職員として県民生活部長 、総務部長など歴任。退職後、小浜市副市長、福井県議会議員を経て、1994年10月から現職(現在三期目)。「若者が住みたくなる 住み続けたくなるまちづくり」を目指し、市民協働、若者、ITを武器にまちづくりを推進。「オープンデータ」「JK課」「活性化プランコンテスト」「河和田アートキャンプ」など注目を集める。これらの鯖江モデルで「地方から国を変える」と意気込む。自らSNSを活用するIT市長でもある。

福田 市長は、市民は顧客ではなく協働者である、という考え方だそうですね。

牧野 市民の方々は、行政サービスは与えられて当然、と考えています。でも、今はそんな時代ではありません。これほど行政へのニーズが複雑多様化しているなか、みんなが満足するには市民の皆様のお手伝いが必要なのです。だから、「顧客から協働者へ」、みんなの町はみんなで作りましょう、ということです。

 いま、市民にお手伝いをして頂いている市の事業は、当初の17事業から38事業に増えました。行政の事業数は700から800くらいあります。私は、そのうち400ぐらいは市民がやってなんら問題ないと考えています。街づくりはそんなに難しいことではありません。「市を良くする」という目標は一つなのですから、そのために市民と職員、市長が情報を共有することが大事です。

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福井モデル 未来は地方から始まる
藤吉雅春・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2015年04月21日

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