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鯖江では、400年前からオープンイノベーションやってます!

鯖江では、400年前からオープンイノベーションやってます!

福田 稔 (日本ビジネスインキュベーション協会理事)

『福井モデル 未来は地方から始まる』 (藤吉雅春 著)


ジャンル : #ノンフィクション

JK課の本当の意義は?

藤吉 本では触れなかったのですが、鯖江市で話題のJK課(女子高生課)について教えて下さい。

牧野 増田レポートが出た後のことでした。レポートが指摘した「消滅可能性都市」とは、要するに20代30代の女性が減少する都市のことですよね。レポートでは、鯖江は消滅可能性都市ではありませんでしたが、それでも10年前に比べると、鯖江を出た後に戻ってくる女性は4割から2割へ、男性は2割から1.5割を切ってしまっています。そこで職員の提案で、行政や政治に一番無関心な女子高校生にふるさとに関心を持ってもらおう、とJK課を発足させました。アプリ開発やスイーツ商品企画など、さまざまな活動をしています。強い決意で始めましたが、スタート時は反対や批判の嵐でしたよ。

 でも今は、やってみて良かったと思います。13人で発足したJK課の子たちに聞いたら、最初はやはり「都会へ出て、そこで勉強して就職したい」という声ばかりでした。ところが、最後に卒業式でもう一度聞いたら、「今までは鯖江の町をよく知らなかったけれど、参加したことでふるさとに誇りと興味を持つようになった。魅力ある良い職場があったらここに残りたい」という声を多くの方から聞くことができました。

福田 確かに、どの地方出身の若い人に聞いても、働くところがあったら帰りたいと言いますね。暮しの質は、地方の方が明らかに都市よりも高いです。

 鯖江はITの町としても知られていますね。小学生にプログラミングを教える試みについて教えてください。

牧野 福井は学力も体力も日本一ですが、鯖江は学力のうち理数系が少し弱いのです。そこで「IchigoJam」という子どものための入門パソコンを使って、プログラミング入門言語のBASICを教えています。出来たものを与えるのではなく、自分で作ったコンピューターでプログラミングを打ち込むのがミソです。小学校のクラブ活動としても行っていますが、子どもたちは大喜びですよ。

 将来的にはオープンデータの町として、市民にスマホやタブレットを持ってもらい、SNSによる市民総参加の行政を目指しています。

強いリーダーより敷居の低さ

福田 たくさんキーワードが出てきましたが、まとめるとどうなるでしょう。

藤吉 福井は、もう400年くらい地方創生をやり続けているわけです。その歴史を見ると、市長には悪いですが、僕は強い優秀なリーダーはいらないと思います。それよりも、「寒村から脱しよう」という強い理念を持つ旗振り役が市民の中に必要です。次に、「自分も参加しよう」という積極的なフォロワー。そして、崖っぷちの覚悟と協力しあう場づくり、敷居の低さが大事です。

牧野 藤吉さんの仰る通りだと思います。

藤吉 持続可能性都市とよく言いますが、持続可能性とは何でしょう? 仕組みの話ではないと思います。僕は、この本の最後で福井の教育の話を紹介しました。人が人に伝えること、つまり、教育こそが「持続可能性」だからです。

 福井大学教職大学院を中心として、福井では教員改革をやっています。学校でも、戦前から教科書通りの授業は行っていません。僕が見に行ったときは、17条の憲法をみんなで読み込み、聖徳太子が試みた国造りは成功したかどうかを論じ合っていました。途中で意見が変わる子もたくさんいますが、その変化を記録して、思考の可視化をやっています。体育の授業すら頭を使っています。

 貧しい県に何ができるかと考えた時、頭を使ってイノベーションを起こすしかありません。

 メガネや繊維、漆器産業が追い詰められながら、常に新しいアイデアを生み出せる秘密は、実は教育にあるのです。地方再生とは、可視化、見える化、危機意識の共有によって次世代、つまり子どもをどう思考豊かに育てるかに尽きるのです。

単行本
福井モデル
未来は地方から始まる
藤吉雅春

定価:1,430円(税込)発売日:2015年04月21日

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  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

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