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伊東潤「歴史の面白さを伝えたい」

伊東潤「歴史の面白さを伝えたい」

「オール讀物」編集部

本屋が選ぶ時代小説大賞2011 受賞作 『黒南風の海』(PHP研究所)

出典 : #オール讀物
ジャンル : #歴史・時代小説

メジャーデビューへ

――メジャーデビューされたのは、2007年の『武田家滅亡』になりますね。

伊東 知人の紹介で、角川書店の単行本編集長に前述の本などを読んでいただき、とんとん拍子で話が進みました。この方との出会いなくして今の自分はありません。最初に会うなり、「小説家志望の方って現在どのくらいいるか分かりますか? 5万人くらいいるんです。恐らくその方々の半分は、伊東さんよりうまいでしょう」と言われ、打ちのめされました。もう無理だと諦めかけたところ、編集長は「我々はプロですから、今の実力ではなく、伸びしろがあるかどうかという観点を重視するんです」とおっしゃいました。つまりコントロールが悪くても、直球が早ければいい。ここ1番でズバッと読者の心をむ言葉を投げ込めるか、小説の勘所を掴んでいるかどうかが大切だというわけです。そして、「文章技術なんてものは後からどうにでもなりますから、企画を一緒に考えましょう」と言ってくださったんです。

 そこからスタートした『武田家滅亡』ですが、最初のゲラなんて、編集長が書きこんだ小さな文字で真っ黒。出版までにどのくらいかかるんだろう、と途方に暮れました(笑)。けれど、その時の厳しい指導がなかったら、プロ作家としての、いまの自分はなかったと思います。

――その後、非常に意欲的に、続々と歴史時代小説を発表されています。『戦国奇譚 首』、吉川英治文学新人賞候補になった『戦国鬼譚 惨』、『北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録』など、題材を多く戦国関東にとっていますね。

伊東 一流作家の方々は、それぞれ得意分野を持っています。山崎豊子さんの船場、船戸与一さんの満州帝国、佐々木譲さんの箱館戦争、逢坂剛さんのスペイン、最近だと、荒山徹さんの朝鮮だとか……。私も当初から、誰も手をつけていないところに地盤を置き、そこから領国を広げていこうなんて、戦国大名みたいなことを考えました(笑)。ただし、時代はマーケット的に戦国でないと厳しい。地域を考えると、当時、まだ戦国関東を描いた小説がほとんどなかったので、ここを自分の最初の基盤にしようと考えました。

 関東の覇を競った群雄の中でも、特に北条氏にこだわったのは、非常に現実的な存在だったからです。上杉謙信や武田信玄というのは、少しリリカルというか、伝説的な雰囲気が漂いますよね。それに比べて、北条氏は政策決定も民主的な合議制を取っていますし、戦争も極力避けてきた。小説にするには、逆にそこが難しいんですけれど、私自身、子供の頃から非現実的なものは好きではなかったので、題材として北条氏がしっくりきました。執筆に際しても、史実に忠実に沿いながら、物語性を重視するというポリシーを貫き続け、北条氏から、武田、上杉と範囲を広げていきました。

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