インタビューほか

永代橋から見た「あかね空」
直木賞受賞作の映画化で、江戸の情景が甦る
山本一力(作家)×浜本正機(映画監督)

「本の話」編集部

『あかね空』 (山本一力 著)

山本 キャスティングは、どのようにイメージしたんですか?

浜本 最初は傳蔵の役は年齢を重ねた重厚な感じをイメージしていたんです。それがある時、「あれっ、永吉と傳蔵を一人二役でやれないだろうか」と思いついたとき、一気にガツーンと構成ができた。それから、永吉と傳蔵の両方を演じられる俳優さんということで探しはじめました。

山本 それで内野聖陽さんに白羽の矢が立ったんですね。対照的な人物を見事に演じ分けていましたね。

浜本 おふみ役はまず、中谷美紀さんだと思ったのですが、最初は断られたんです。若いおふみと年取ってからのおふみ、その両方を演じる自信がないって。たぶん、ぼくの台本もまだ弱かったのかもしれません。その後、何度も台本に手を入れながら、結局、二年くらい台本にかけました。

山本 そうですか。私もあの作品を書いた時は、原型が出来上がってからも一年以上かけて何度も何度も手を入れましたが、映画になる時も、別の人間がもう一回、同じだけの期間をかけて書き直しているということなんですね。だからこそ大勢の人を動かすという勝負ができる。すごいことだと思うなあ。

 で、おふくろさんは、映画を観て何と?

浜本 お袋は、台本を書いている途中でやっぱり亡くなってしまいました。映画化の方も前後して一回暗礁に乗り上げて。

山本 そうですか……。それは辛かったでしょう。

浜本 でも、今から考えると、母親が悪いことを全部持って逝ってくれたのかもしれません。その後、とんとん拍子に話が進んで、一度は断られた中谷さんも、再度お願いしたらOKを頂けた。「あの時断ったけど、本当はものすごく気になってたんですよ」って。内野君も快諾してくれて、「ウェルメイドな原作でウェルメイドな脚本だからすごいプレッシャーですね。僕、頭剃ります。眉毛も剃ります」って、一人だけ、時代劇なのにかつらなしでやってくれました(笑)。

山本 なるほど。内野聖陽さんは見事にはまりましたね。

 今、「あかね空」の舞台が名古屋の中日劇場で再演されているんですが、初演の時からおふみを演じている十朱幸代さんが、「またおふみに戻ってこれて嬉しい」と言って下さったんですよ。自分が書いた小説が、一人歩きして、何年にもわたって役者さんの身体の一部になっている。これはすごいと思いましたね。

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あかね空
山本一力・著

定価:本体640円+税 発売日:2004年09月02日

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