- 2013.10.08
- インタビュー・対談
スティーヴン・キング 恐怖の帝王、ケネディ暗殺を描く
『11/22/63』上下 (スティーヴン・キング 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
――舞台は50-60年代でも、主人公は現代人ですね。
SK わたしの主人公、ジェイク・エピングは、何度も過去へ旅をします。「穴」をくぐって到着するのはいつも1958年9月19日、正午2分前の世界。再び穴を通って「現在」に戻り、また過去に行くと、前の時間旅行でやったことは全てリセットされて元に戻ります。それが法則です。そして過去に暮らす時間が長くなるにつれ、ジェイクの持つ21世紀の感覚が、50-60年代の世界と軋轢を起こすことになります。こういうことは同じ頃のアメリカの広告業界を描くTVドラマ《マッドメン》では決して起こりません。
この小説を書きはじめたとき、わたしは、たいへんな挑戦に臨む気持ちでいました。58年から63年にかけての世界で生きるとはどういう感じなのか。それを自分は捉えることができるだろうか。しかし「書く」ときに重要なのは――ほかのすべての想像的な行為がそうであるように――「信じる」ことです。なくてはならないものは必ずそこにある。そう信じなければなりません。
書き進めるうちに、自分はこんなにいろいろなことを憶えていたのかと驚かされました――バスに乗って機械に運賃を入れたときに硬貨がたてる音、お客がみな煙草を吸っていた時代の映画館の匂い、当時の流行だった本、何か調べるときに図書館がどれほど重要だったか……。
――あの時代の音楽がたくさん出てきます。
SK わたしは昔からポップ・ミュージックのファンなんです。1955年から現在までの音楽はだいたい把握しています。そういう音楽を聴くと、わたしの頭は落ち着くんですよ。それにポップ・ミュージックは、アメリカ人の生き方がどんなふうに変わってきたかの指標でもあり、ある特定の時代がどんなふうだったかを示すものでもあります。
『11/22/63』の冒頭に「ダンスは人生だ」という言葉を掲げました。わたしはずっと「ダンスする」ということに興味があったんです。ダンスは求愛の儀式の象徴です。ダンスの変遷は、人間の求愛や愛や生のかたちが長年にわたってどう変遷してきたかを映しています。わたしは音楽にもダンスにも夢中で、それがこの作品には盛り込まれているんです。
個人的にいちばん強烈な印象を受けた音楽は、50年代初頭のロックンロールでした。あの時代の少年少女がジェリー・リー・ルイスやチャック・ベリー、リトル・リチャードの音楽を聴いたときに感じた昂奮を、この小説のなかに取り込もうとしましたね。リトル・リチャードの曲をはじめて聴いた瞬間、人生というものは変わるんです。
はじめてフレディ・キャノンの《パリセイズ・パーク》を聴いたとき、わたしは思ったんです、「この音楽を聴いてると、生きてるってすごく楽しいと思える」とね。
(『11/22/63』アメリカ版ペーパーバック収録のA Conversation with Stephen King about 11/22/63を翻訳、再構成)
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