- 2016.10.18
- 書評
タイムトラベル・ロマンスの歴史に残る名作
文:大森 望 (文芸評論家)
『11/22/63』 (スティーヴン・キング 著/白石朗 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
時は一九六三年十一月二十二日、午後〇時三十分。ところはテキサス州ダラス。第三十五代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディと夫人のジャクリーンを乗せたオープン・カーがテキサス教科書倉庫ビルの前を通過したとき、三発の銃弾が発射され、そのうち一発が大統領の頭部に命中。ケネディの命を奪った。
その七十分後に逮捕され、大統領暗殺犯とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドは、事件の二日後、ダラス市警本部の地下通路でナイトクラブ経営者のジャック・ルビーに射殺された。その後、リンドン・ジョンソン新大統領直属の調査委員会(ウォーレン委員会)が組織され、大統領暗殺はオズワルドの単独犯行だったと結論する報告を出したが、いまなおさまざまな陰謀説が根強く囁かれている。
この事件を題材にして書かれたのが、本書『11/22/63』。邦訳して原稿用紙二千五百枚、文庫では上中下巻合計一四二〇ページにも及ぶ超大作にして、著者のスティーヴン・キングにとっては初めての本格的なタイムトラベルSFである。原書は、二〇一一年十一月八日に米スクリブナー社から刊行。たちまち絶賛を集めてベストセラーとなり、ロサンジェルス・タイムズ文学賞ミステリー/スリラー部門、国際スリラー作家協会賞長編部門を受賞。さらにオーガスト・ダーレス賞(英国幻想文学賞ホラー長編部門)やローカス賞SF長編部門の最終候補にも名を連ねた。SFとしても、ミステリーとしても、サスペンスとしても、ホラーとしても高く評価されたかたち。
邦訳は、二〇一三年九月、それぞれ五百ページを超えるソフトカバー単行本の上下巻で文藝春秋から刊行。原書と同じく大評判となり、「このミステリーがすごい! 2014年版」の海外編と「週刊文春ミステリーベスト10」の二〇一三年海外部門でともに第1位を獲得。『SFが読みたい!2014年版』の「ベストSF2013」海外部門では第5位にランクインした。ちなみに、「このミス」海外編の歴代ベストテン(一九八八年~二〇一五年)を見ると、その他のキング作品は、『ミザリー』4位、『IT』4位、『グリーン・マイル』3位、『ザ・スタンド』8位という成績。「このミス」ランキングを指標とするなら、本書は、この三十年弱の間に邦訳されたキング作品で、日本の読者にもっとも支持された長編と言えるかもしれない。実際、従来のキング・ファンやホラー愛好者以外の読者にも広く読まれた印象がある。
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