特集

『イニシエーション・ラブ』徹底分析
小説の舞台と映画ロケ地を歩いてみた

文: 「本の話」編集部

テニスコートでのねじれた気持ちが恋に火をつける

 こうしてデートを重ねることになった2人。夏も過ぎ去った9月4日、

僕たちは今日は、いつものジョルダンではなく、青葉通り沿いのDADAというイタリア料理の店に入ることにした。(P76)

 ここで薄焼きのピザとパスタを頼みビールで乾杯した。しかし、現在は青葉通りに同名のお店はない。「DADA」は無くなってしまったのだろうか?

 調べてみると、静岡市内に「DADA」という名前のレストランが2軒。そこで駅ビルパルシェのDADAクラシコに入ってみた。こちらは、青葉通りにあった「DADA」と関係のあるお店ですか?

DADAクラシコ:静岡市葵区黒金町499 パルシェ6F

「はい、そうです。青葉通りにお店があったのは10年前まで。オーナーが最初に作ったお店なので、本場イタリアを意識した落ち着いた雰囲気のお店でした。今は静岡市内だと駅ビルのパルシェに入っているDADAクラシコと、DADA静岡中原店(駿河区中原158-1)の2店舗です。当時に比べるとカジュアルな雰囲気になっています。メニューも変わりました。ピザはないんですよ」

落ち着いた雰囲気の店内。人気メニューはパスタのポテトベーコン800円(税込864円)。

 と教えてくれたのはDADAクラシコの店員さん。1フロア下の5階には江崎書店が入っている。

 ちなみに映画で2人がピザを食べるシーンには「シェーキーズ」が使われていた。

 このとき鈴木はマユから、海に行ったメンバーでテニスをしようという話が出ていると聞かされる。

「国吉田のほうにシャンソン化粧品のコートがあるの、知ってる?」
「あ、わかる……と思う。アピアの角を入ってったあたりの、あの線路沿いの」
「そうそう。あそこのコートが二面取れたって、ゆっちゃんが言ってて。……昨日かな? 男性陣には望月さんから連絡が回るって聞いてたんだけど」
(P79)

プラザアピア静岡店:静岡市駿河区中吉田15-8
シャンソン化粧品:静岡市駿河区国吉田2-5-10

「アピア」とは、ボウリング場などを備えた遊戯施設。鈴木も男友達とボウリングに出掛けることはあったのだろう。「シャンソン化粧品」は静岡市に本社を置く化粧品メーカー。しかし、テニスコートの存在は確認できなかった。

「女子バスケットは強いので有名だったけど、テニスコートは聞いたこと無いなあ」(タクシーの運転手さん)

 テニスの後に三台の車に分乗して食事に行った「シシリア」は作品中に場所を明示されていないが、駿河区池田212-2に同名のスパゲティーやステーキなどを出す飲食店があり、国吉田から見て静岡大学方向にあることや車の停めやすい駐車場があることなどから、同店だろうと推察される。

 交際中であることを隠して参加したテニス。お互いの気持ちが通い合わなくて、もどかしい気持ち。この日のねじれた感情がエネルギーとなり、2人の関係は親密なものになっていく。

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イニシエーション・ラブ
乾くるみ・著

定価:本体580円+税 発売日:2007年04月10日

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