インタビューほか

公開対談
浅田次郎×林真理子
「小説講座・人物造型の舞台裏」

第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL

菊池寛が昭和10年に創設した芥川賞、直木賞が150回を迎え、記念イベント「芥川賞&直木賞フェスティバル」が丸の内・丸ビル1階「マルキューブ」にて2014年3月1〜2日に開催されました。 このイベントの「トリ」をつとめられた、林真理子さんと浅田次郎さんによる対談を再録してお届けします。

作家にとっての“武器”

浅田次郎氏

浅田 ユーモア小説についていえば、ユーモアっていうのはわりと子供の頃から備わってるものじゃないかなと思うんですよね。クラスのなかで、みんなを笑わせて喜ばせてるヤツって決まってるでしょ。だいたい、僕も林さんもそのタイプだったと思うんですよ。笑いだけは勉強して身につくものでもないし。ユーモア小説を書いてるときって、自分でもすごく気楽な感じがします。

――林さんはいま「オール讀物」でハルコさんというたいへんユニークな女性を主人公にした新しい小説シリーズを始めていただいています。ハルコさんというのは小さなコンサルティング会社を経営しているおばさんなんですが、この人はひどく厚かましいんですが、どこか憎めないところがあって、いろんなところでお節介を焼いている。それを連作短編で書いていただいています。

 「中島ハルコの身の上相談室」は、モデルがはっきりしていて、私の友達なんです。どういう人かといいますと、新幹線のキオスクで平気で女性週刊誌を立ち読みするんですよ。「ちょっとやめなさいよ」と言うと「ふん! 『女性自身』に読みたい記事あったんだけど、あんな雑誌を買うのは私のプライドが許さないからさ!」とか、平然と言いはなつような人。立ち読みするのと買うのと、どっちがプライドにかかわるか。ともかく、非常に面白いんですよ。この人を小説にしない手はないと始めたんですが、実をいえば、その人を書いてるようで、実際は私のことを書いてるんですよね。作家ってモデルがいるようでいて、基本的には自分なんじゃないかなって、いつも思っています。私は彼女ほど図々しくもないし、小心な普通のオバサンですけど、こういうことができたらいいなっていう願望も、こういうこと言ってみたいという思いも込めつつ書いてるので、結局は私なのかなと。ディテールはその人からいろいろ借りてますけど。

――林さんの人間を見る目はたいへん意地悪なところがありますね。

 ひどーい、それって!

――これは誉め言葉で申し上げてます。これは作家にとってたいへん重要な武器ですから。

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