- 2016.11.08
- インタビュー・対談
現実の手触りと小説の嘘――横浜をめぐって 堂場瞬一×伊東潤【後編】
「別冊文藝春秋」編集部
『横浜1963』 (伊東潤 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
主人公が嫌なやつの方が小説を読んだ実感がある
伊東 僕は元々小説家になるつもりはなかったんです。本格的に文章を書き始めたのは、お城のホームページを立ち上げるためだったので、二〇〇二年からでした。
堂場 最初から小説家を目指していたわけではなかったと?
伊東 そうです。ただ、文章を書いていくうちに、言葉がどんどん湧き出てくるようになったんです。かつて読んだ歴史小説特有の用語がぱっと浮かんできて、流れに任せて書いているうちに小説になっていきました。それだけなら単なる趣味ですが、かつて読んだ小説や映画などの知識から、ストーリーが作り込めるようになり、小説の体裁が取れるようになったわけです。
堂場 それまでの読書の蓄積がないとできないことですね。それも若い頃の読書が知らず知らずのうちに身になっていて、言葉として体のなかに入っていた。
伊東 たしかに、人よりは多くの本を読んできましたが、社会人になってからは実用書ばかりだったので、小説が書けるなんて、自分では思いもしませんでした(笑)。
それにしても、堂場さんの執筆活動は旺盛の一語に尽きます。創作は良書を読んだ蓄積によるものだとよく言われますが、堂場さんがこれまでどんな本を読んできたのか、とても気になります。
堂場 小説を本格的に読み始めたのは小学校四年のときで、SF小説の「ペリー・ローダン」シリーズが最初に手にとった本でした。
伊東 ドイツ発祥の超長期のシリーズですよね。読んだことはありませんが(笑)。
堂場 一九六一年から始まって現在も発刊が続けられている、二千巻を超えるシリーズです。表紙が格好良かったので、二十冊くらい買いました。それからは、翻訳小説ばかり読んでいました。当時はミステリーといえば海外ものでしたから。伊東さんはやはり小さい頃から歴史物が好きだったんですか。
伊東 小学六年のときに放映されていたNHK大河ドラマが、吉川英治原作の『新・平家物語』で、それが面白かったので原作を読み始めたのが最初です。
堂場 なるほど、でも小学生で吉川英治を好むとは、相当ませた子どもですね。
伊東 大河が終わった後だったので、厳密には中一ですが、さほど難しいとは思いませんでした。中学生になると角川文庫から刊行されていた横溝正史シリーズや森村誠一さんの作品から入って、三年になると司馬遼太郎にどっぷりはまりました。同時にダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルドのいわゆる御三家を愛読していました。
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