2016.03.14 インタビュー・対談

新しい信長像――そのカリスマと狂気

『王になろうとした男』 (伊東潤 著)

新しい信長像――そのカリスマと狂気

本郷 マンガにテレビドラマに織田信長の人気は衰えを知りません。今回は、俳優、作家、研究者の三者三様の立場から、これまでとは違った新しい信長像に迫っていければと思います。高橋さんはNHK大河ドラマ『国盗り物語』を始め数々の作品で信長を演じてこられました。

高橋 当時、私は二十九歳。あの信長は、他では味わうことのできない貴重な体験でした。信長は私のなかで一番演じやすい役柄で、何もしていないのにセリフがバババッと出るときもあったほどです(笑)。

本郷 伊東さんは戦国時代を題材にした作品を多く執筆し、小説家の視点から新しい信長像を提案しています。

伊東 信長と野心をテーマにした作品『王になろうとした男』では、あえて信長本人の視点は設けず、家臣たちの視点から、信長を描きました。信長は、長所と短所が一個の人間の中で共存する一種のカリスマだと思います。彼の強烈な個性に、現代人が引き付けられるのはよくわかります。

高橋 常に考えているのですが、信長の人気は、単に天下を取ったから生まれたものではありませんよね。一般庶民から見るとちょっと上のランクの人が、自分の周りの人を籠絡したり、倒したりして自分の世界を作り上げていくところに憧れるのだと思います。

伊東 確かに信長は、二つに分かれた尾張国の守護代家の家老という家柄で、血統が超一流とは言えません。それに加えて、日本人には信長的な強いリーダーへの憧れがあるのではないでしょうか。現代でも世界を見渡すと、プーチン大統領や習近平国家主席のように強いリーダーがいる。翻って我が国の首相たちは……という部分もある(笑)。

本郷 そこに一言加えたいのは、信長は豊臣秀吉のように老いさらばえた姿をさらさなかったのが大きいと考えます。

 緒形拳さんが大河ドラマ『黄金の日日』で演じた秀吉は、晩年に信長を超える専制君主になっていく過程が丁寧に描かれていました。『軍師官兵衛』で竹中直人さんが演じた秀吉も同様です。史料から秀吉を見ても同様で、信長の家臣としてバリバリやっていた頃と天下を統一した後の晩年では、全く違う人間になっていたように思えてなりません。

 三人の天下人でいえば徳川家康は、徳川二百六十年の太平の世を作り、大成功して晩年を迎えてしまう。こうなってしまうと、一般庶民はなんとなく感情移入をすることができません。

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王になろうとした男
伊東潤・著

定価:本体660円+税 発売日:2016年03月10日

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