本書は著者の北村薫さんが、ご自身の実のお父さまが遺された日記をもとに、昭和初期という<時代>を描く「いとま申して」シリーズの第2巻。前作『いとま申して 「童話」の人びと』では、神奈川中学、慶應義塾大学予科で創作活動に没頭していた主人公・宮本演彦少年は、いよいよ慶應本科へと進み……。
――ひとりの大学生の姿を通じて、普遍的な時代そのものが浮かびあがってきますね。
レンズを高いところへ置いた昭和史というものは沢山の本が出ていますけれど、この『慶應本科と折口信夫』のように学生の立場まで視点を下ろして、その日常から綴られる昭和史というのは、これまではほとんどなかったですよね。また、父の生涯の師として登場してくる折口信夫先生は、日本国文学史上の巨大人物ですが、あまり語られていないような慶應の教壇での実際の様子が、断片的かもしれませんが色々と出てくることでも意義が深い一冊になったと思います。
話のメインになっているのは父の日記ですが、これだけを元にして書くわけには、もちろんいきません。それを芯にしながらも、当時の世相やそこに生きている人々を登場人物として描いていくには、多方面にわたる資料の読み込みが必要で時間もかかりました。ただ、資料というのはそのまま鵜呑みにしていいものではないんです。調べていくうちに嘘とは言わないまでも、だいぶ虚構が含まれているようなことが見つかったりします。昔のことは難しいですね。でも、そこも含めて事実を探していく面白さがあって、意外なところから意外な資料が出てきたりする。巡り逢えたときにはさらなる感激もあるものです。
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『いとま申して』解説
2013.08.06書評 -
この作品を書くのが務めだった
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いま、あえて福沢を語ること
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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