インタビューほか

私は人間が好きなんです

「本の話」編集部

『院長の恋』 (佐藤愛子 著)

──今回の絹ばあさんは、男性を惹きつけてやまない人ですが、おっとりしていますよね。

佐藤   脇役ですけど、後家の菊枝ってのが出てきますでしょ。私、彼女が気に入ってるんですよ。

──従姉妹の絹さんに嫉妬している人です。

佐藤  戦争で夫を亡くしてから、男に縁なく働きづめで生きてきた人で、色々と楽しみの多かった絹を見ていると頭にくるのね(笑)。特に、戦争中、自分がルーズベルトやチャーチルの藁人形に竹槍を突き刺していた頃も、絹には学生服の恋人がいたらしいと知った時、羨ましくて胸が煮えたぎる(笑)。戦争を体験した女の心理です。実はそこにわりと重点を置いて書いてるんですよ。

──表題作の「院長の恋」では、分別盛りの病院長が恋の深みにはまっていく様が、段階を追って、実にリアルに描かれています。

佐藤  いや私はね、恋する男の物語ではなく、恋そのものを主人公にした話を書きたかったんです。恋というもの。それは一つの情念で、やがては必ず醒めるんですよ。永遠の恋なんかないんです。それがテーマです。

──全篇に「これが恋という病気」、「いつから始まったのかわからないけど、いつの間にやらおかしくなっていって、ある時、気がつく。その時はホンモノになってるの」など、恋についての箴言(アフォリズム)がちりばめられていますね。終盤に女傑が登場します。

佐藤  あの和歌子さんは、私の分身(笑)。恋の悩みの相談役みたいなこと、実際に頼まれることがあるのよ。

──人間心理のベテランとして。

佐藤 恋の相談って一回じゃ終わらないのね。恋人への未練が何回もぶり返してくる。癒えるまでには時間がかかります。

院長の恋佐藤愛子

定価:本体543円+税発売日:2012年03月09日