2014.09.18 書店の謎

興味が無い分野の担当になった書店員は
どうやって克服しているのか?

文: 「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、興味が湧かない分野の担当になったらどうするか? 

全くもって興味が湧かない分野の担当になったらどうやって克服しますか? そもそも書店員さんは好奇心旺盛なのでそんな心配はいらないのでしょうか?(東京都 30代 女性)

 なるほどのご質問。書店員さんでなくとも、会社勤めをしている人なら異動や担当替えは避けられません。ビジネス書を読むよりお仕事の参考になる工夫が見つかるかも知れませんよ。

 

栗原浩一(あゆみBOOKS仙台青葉通り店)

 興味がないというか全然わからない担当になるときもあります。私の場合は理工書などですが……ただ、今はメールやファックスなどでいろいろな情報がもらえますし、営業の方も店に来て話をしてくれるのでなんとかなります。あとは純粋に数字を追いかけて売れないものを売れているものにかえていく。自分が並べた本が売れたり、売れている本がわかってくると面白くなってくるんです。

 

戸木田直美(代官山蔦屋書店)

 どのジャンルでも、工夫して売場をつくったり、フェアを開催したり、試行錯誤を繰り返すと、結果として、お客様からの手ごたえを感じることができます。それがとても楽しいのです。そのうち、お客様の気持ちに寄り添いたくなってきて、お客様が手に取るもの、そのジャンルのものに、自然と興味がでてきます。当店だと各ジャンルにコンシェルジュが存在するため、聞きたいことにいろいろ答えてもらえますし、なにより目の前の本たちが知りたいと思ったことを次々と教えてくれるので、どんどん好きになってしまって仕方ありません。

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 例えば私のように、大学で歴史学を専攻したような文系の者が理工書売り場の担当者になることもあります。売り場担当の書店員の仕事は、商品をお客様が見つけやすい状態になるよう分類し、並べることから始まります。ご来店なさるお客様の興味、関心がその部門の商品群の中でどの辺にあるのかを、お求めいただいた商品、手に取られた商品などから探り、どういったお品物を提供すれば喜んでいただけるのかを考えます。やはりその過程で商品知識はある程度必要になりますので、それは各々勉強することになります。事務職の方がExcelの勉強をなさるように、営業職の方がマーケティングの勉強をなさるように、私たちは担当部門の分野の勉強をします。私たちは販売職であり、商品を販売することが仕事です。そしてその仕事のすべてはお客様にどうやって喜んでいただくかということに向かっています。それに、個人の興味関心は関係しないと考えます。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 今まで経験したことがあるのは、児童書、文芸書、地図ガイドですが、例えば学習参考書などの担当になったら元来勉強が苦手な私は拒否反応を起こしそうですね……。何度かお休みされている人の分の担当分野を手伝ったりしたときは、最初は、「嫌だー嫌だー」からはじまって、それから少しでも興味を感じられる本を探します。例えば、英会話の簡単なものとか。それからその分野に詳しいお客様に助言を請い(学生さんが詳しいです。自分で使っていたりとか、先生はこう言ってたとか教えてくれるので)、他のお店の担当の方の棚を見たり教えてもらいながら、嫌なりに好きになろうと努力はするように思います。「入店された方が、気持ち良く過ごしてくださるといいな」という想いだけしかないので、努力することで、いつか克服出来るといいなと信じながら働くように思います。自然と棚に愛情も湧いてくるので、その日までじっくり付き合うように思います……多分。

 

山本善之(くまざわ書店大手町店)

 個人的な工夫点ですが、興味を持てないときは内容に関係無い小さなところから自分のフィールドへの繋がりを探しています。遠回りの繋がりを探したり雑学を積み重ねると、記憶の残り方・興味の湧き方が違う気がします。私はスラムダンク世代で学生時代はバスケ部でした。最近3on3の大会を見ていたら、ストリートを象徴するように激しく、口悪く、でもクールなプレイをする選手がいました。比留木謙司さんというその選手についてググると、ツイッタープロフィールに「ロバート・ヒルキは私の父です」と書いてあります。えっ、なんで今まで誰も教えてくれなかったの?! その瞬間、『TOEICテスト 直前の技術』(アルク)でお馴染みロバート・ヒルキさんへの私の興味は振りきれんばかりに上がっていました。これからはもっと語学書と仲良くなれそうです。進むと「同僚の旅行先出身の著者」とか「タイトルでダジャレ作れそうだな」とか細い糸を興味が湧くまで束ねています。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 本そのものも人と同じような個性があり、著者、編集といった作り手も人、僕ら売り手も人、読者も人です。どんな分野にもたくさんの人とのつながりがあります。苦手なジャンルほど周囲の人に助けてもらい逆もあり。それが楽しめなくなったら、この仕事を辞めようと思っています。

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