書評

なぜ安倍首相が「わが軍」と口走る自衛隊が生まれたか――池上彰の戦後史解説

文: 池上 彰 (ジャーナリスト・東京工業大学教授)

『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇』 (池上彰 著)

 2012年から東京工業大学リベラルアーツセンターで現代史を中心に教えるようになりました。歴史に苦手意識を持つ理系の学生たちに、歴史を中心にして社会の動きを教えようというわけです。

 その講義録は、三部作として出版されました。これは、そのうちの二番目を文庫にしたものです。

 最初に出たのは、『この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう』という長いタイトルの本です。これは、私の「現代世界の歩き方」という講義の内容をまとめたものでした。

 二番手のこの本は、「現代日本を知るために」と題した一年生向けの講義録が元になっています。講義自体は2012年の前期に行われました。改めて読み返しても、内容を変更する所はほとんどありませんでしたが、その後の動きなどを補足してあります。

 この本を見ればおわかりのように、取り上げたテーマは戦後日本の現代史です。それが、なぜ「現代日本を知るために」という講義名になるのか。それは、現代を理解するためには、その少し前にさかのぼってみることが大事だと考えるからです。その歴史を知ることで、現代の日本がわかるからです。

 たとえば自衛隊の存在がしばしば政治問題化してきたのには、どんな理由があるのか。戦争を放棄し、軍隊を持たないと宣言する憲法第9条の下で、安倍晋三首相が思わず「わが軍」と口走ってしまうような強大な軍事組織が、どのようにして誕生したのか。警察予備隊の発足からの歩みを辿れば、その論理がわかります。

 安倍晋三内閣が集団的自衛権を容認する方針を打ち出したときに、なぜ大変な論争が巻き起こったのか、これも、これまでの歴史を見ればわかるのです。

 いま沖縄県では、宜野湾市の米軍普天間基地(普天間飛行場)を名護市辺野古に移設する計画が進められています。地元では反対運動が続いています。どうして、これが問題になるのか。この本では、その点を、そもそも米軍基地がなぜ沖縄に多いのか、という根本的な所から解き明かしています。

 戦後、日本から切り離され、過酷な環境の中で生きることを余儀なくされてきた沖縄県民が、いままた、「安全保障」の名の下に本土の犠牲になろうとしている。そんな沖縄の人たちの思いを、歴史から知ることもできるのです。

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この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」
池上彰教授の東工大講義 日本篇

池上彰・著

定価:本体510円+税 発売日:2015年07月10日

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