- 2015.07.19
- 書評
なぜ安倍首相が「わが軍」と口走る自衛隊が生まれたか――池上彰の戦後史解説
文:池上 彰 (ジャーナリスト・東京工業大学教授)
『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇』 (池上彰 著)
現代の日本を知る上で、周辺国との関係の歴史も欠かせません。たとえば韓国です。韓国は、なぜ反日なのか。韓国政府が、いわゆる「慰安婦」の問題を提起すると、日本政府はなぜ「解決済み」と突っぱねるのか。これらは、戦後の日韓関係とりわけ日韓基本条約の交渉過程と条約の中身を知ることで、理解ができるはずです。
第二次安倍政権は、日本経済のデフレからの脱却が大きなテーマです。そのための大胆な金融緩和は、日経平均株価を大きく引き上げ、一部ではバブルの様相を呈しています。
では、そもそもバブルとは、どんなものなのか。かつての日本のバブルは、どのような経緯で発生し、なぜ崩壊したのか。そこには、アメリカに配慮し、独自の経済金融政策が取れなかった、悲しい日本の歴史が存在します。
バブルの歴史から何を学ぶのか。「バブルは良かった、バブルよもう一度」という話ではないはずです。
にもかかわらず、安倍政権の経済政策であるアベノミクスは、株式市場でのミニバブルを引き起こすことで、デフレからの脱却を目指しています。それが何をもたらすのか。まずは、バブルの歴史から見直しましょう。
日本もアメリカほどではありませんが、格差が問題になってきました。日本が「一億総中流」と言われた時代は、同時に高度経済成長の真っただ中でした。これは無関係とは言えないのです。
「一億総中流」と呼ばれたほどの分厚い中間層が存在してこそ、活発な消費活動が行われ、経済は成長するのです。格差がひどいと、多くの国民は日々の生活に汲々とし、消費活動は活発になりません。
一方、富裕層は、いくら贅沢な生活をしたところで、人数が少ないのですから、消費活動はたかが知れています。その結果、極端な格差が定着すると、経済活動は活発でなくなってしまうのです。
健全な経済成長を実現するには、格差の縮小を図ることが必要なのです。
東工大での講義は、まず日本経済新聞月曜朝刊に連載され、多くの読者を得ました。連載記事は電子版にも掲載されます。電子版の記事は、何人の読者がアクセスしたか、実数が明らかになります。まるでテレビ番組の視聴率のように、毎日の順位が出ます。この連載は、おかげさまで毎回多数の読者を獲得しました。現代史を学びたいと考えた人は、学生ばかりではなかったのです。
新聞連載に続き、この文庫も、多くの読者の手元に届くことを願っています。
2015年4月
ジャーナリスト・東京工業大学教授 池上 彰
(「文庫版あとがき」より)
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