書評

匿名取材探偵座談会
──すべてが、「いま一番いい店」

文: 「本の話」編集部

『BEST of 東京いい店うまい店』 (文藝春秋 編)

匿名取材探偵A  今度の『東京いい店うまい店』(以下、『いい店』)は、いつもの体裁とはまったく変わったね。

編集部  そうなんです。『いい店』は一九六七年に初版が刊行された食ガイドの草分けですが、刊行以来四十三年、読者の方々からも篤(あつ)くご支持をいただいてきました。ですが、半世紀近く経ったので、これまでのノウハウを活かして、いま東京で一番うまい店を選んだ「ベスト・オブ・いい店」をつくろうということになった。ベストセレクションですから持ち運びも考えて、判型も従来とは違う新書判にしたんです。

匿名取材探偵B  表紙の池波正太郎さんの絵が『いい店』らしいですね。

A  ジャンル分けはこれまでと同じだけれど、各ジャンルの冒頭にそのジャンルのここ数十年の変遷を記した読物を入れたのも新しい試みだよね。そのせいで、僕らは何冊も資料を読みこみ、昔からある老舗(しにせ)も食べ歩いたから、ものすごく労力が増えたわけだけれど(笑)。

B  たとえば天ぷら篇を読むと、江戸時代の屋台から始まり、明治、大正、昭和と有名店の移り変わりがこれを読むだけでわかる。フレンチ篇も面白かったですね。東京のフレンチの原点が築地にあった「築地精養軒」なのは知っていましたが、横浜のホテルニューグランドの支店として昭和九年に出来た「東京ニューグランド」から錚々(そうそう)たるシェフが巣立ったことなんて、私はこれまで知りませんでした。

  この二十年くらいのあいだにさまざまなグルメガイドが出版されたし、ネットのガイドも充実していますが、『いい店』の特色は、店紹介の独特の文章だと思うんですね。なにがうまいとかを直截書くのではなく、その店の背景を含めた知識をしっかりもっている取材者が店の魅力を伝えるところです。今回は各々の店に文章を多く割けないので、ジャンルごとの料理の魅力をお書きいただくことで、『いい店』らしいガイドにしようと思ったわけです。ですから、読物としても楽しめると思いますよ。

BEST of 東京いい店うまい店
文藝春秋・編

定価:980円(税込) 発売日:2010年11月27日

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