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トランプ大統領で世界はどうなる? 日本はどうする?

『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』 (池上彰・佐藤優 著)

トランプ大統領の誕生で世界はどう変わるのか? 10月刊の最新著『新・リーダー論――大格差時代のインテリジェンス』(文春新書)で、池上彰氏と佐藤優氏は、トランプ大統領誕生の可能性と、そこから予想される事態を論じている。ここに議論の一部を紹介する。

トランプ大統領で戦争は遠のく?

佐藤 奇妙なことに聞こえるかもしれませんが、トランプが大統領になったら戦争は遠のくと思います。

池上 「オバマはインテリだからむやみに戦争をしないだろう」と思うから、みんな勝手なことができる。他方、「トランプは何をやるかわからない」という怖さが、抑止力になるというわけですね。

佐藤 それともう一つは、「金持ち喧嘩せず」です。

 トランプの周囲にいるのは、新自由主義のプロセスにおいて富を蓄積してエスタブリッシュされた連中ですから、失うものが多い彼らは、戦争のリスクを望まない。そうすると、「格差と平和」というパッケージになる。

 皮肉なことに「平和」と結びつくのは、「平等」ではなく、「格差」。そして「平等」に結びつくのは、「戦争」なのです。

 国民国家的な体制を取っているかぎり、戦争が起これば、金持ちの子供も、庶民の子供も、「平等」に「戦争」へ行かざるを得ない。また戦費を調達するために、累進課税制を取らざるを得ない。「戦争」になれば、いやでも「平等」になるわけです。ピケティの『21世紀の資本』から読み取れることです。

「第一次世界大戦まで格差が構造的に減った様子はない。1870─1914年でうかがえるのは、せいぜいがきわめて高い水準で格差が横ばいになったということでしかなく、ある意味では特に富の集中増大を特徴とする、果てしない非博愛的なスパイラルなのだ。戦争がもたらした大規模な経済的、政治的なショックがなかったら、この方向性がどこに向かっていたかを見極めるのはとてもむずかしい。歴史分析と、ちょっと広い時間的な視野の助けを借りると、産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだったことがわかる」(『21世紀の資本』山形浩生・守岡桜・森本正史訳、みすず書房)

 すると、平等を最も確実に実現する方法は、第三次世界大戦ということになる。

池上 それが嫌ならば、格差を受け入れろ、ということになる。何とも皮肉なジレンマです。

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新・リーダー論池上彰 佐藤優

定価:本体830円+税発売日:2016年10月20日