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トランプ大統領で世界はどうなる? 日本はどうする?

『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』 (池上彰・佐藤優 著)

トランプ大統領の誕生で世界はどう変わるのか? 10月刊の最新著『新・リーダー論――大格差時代のインテリジェンス』(文春新書)で、池上彰氏と佐藤優氏は、トランプ大統領誕生の可能性と、そこから予想される事態を論じている。ここに議論の一部を紹介する。

トランプ大統領で日本はどうなる?

池上 トランプが大統領になったら日本はどうなるでしょうか。

 トランプは日米安保条約について、「日本が攻撃されたら米軍が助けることになっているが、アメリカが攻撃されても日本は助けに来ない。これは不公平だ」と発言しています。米軍駐留経費も、現在の日本からの「思いやり予算」では不足で、全額を日本が負担すべきだと言っています。

佐藤 トランプの本音は孤立主義ですから、できれば外国駐留のアメリカ軍を本国へ引き揚げさせたい。

池上 トランプは、「アメリカ・ファースト」を主張しています。「アメリカのことが一番。アメリカさえ良ければいい」と。日本や韓国から米軍を撤退させる可能性にまで言及しているのは、「他国のことなど構っていられない」という意味です。

 一見、トランプの発言は突飛に聞こえます。現代のわれわれにとっては、アメリカと言えば、「世界の警察官」というイメージだからです。ところが歴史的には、孤立主義こそアメリカの国是でした。

佐藤 トランプの孤立主義は、むしろアメリカの伝統に則っています。

池上 その孤立主義は、アメリカ国内では「モンロー主義」と言われてきました。一八二三年に第五代アメリカ大統領のジェームズ・モンローが議会で演説して提唱した外交方針に由来します。「南北アメリカ大陸以外には、アメリカは干渉しない」「ヨーロッパのことなどには関知しない」と。このモンロー主義は、ヨーロッパにとっては、アメリカの「孤立主義(一国主義)」となります。

佐藤 第一次大戦時も、第二次大戦時も、アメリカは、当初、不介入主義、中立の立場を取っています。第一次大戦後にウィルソン大統領が提唱した国際連盟も、モンロー主義を掲げるアメリカ議会の反対で、アメリカは参加していません。

池上 第二次大戦後、アメリカが孤立主義を放棄したのは、ソ連に対抗するためです。世界が社会主義化されるのを防ごうと、アメリカは世界各地に積極的に介入し、「世界の警察官」を自負するようになっていきました。

 しかし、アメリカの歴史から考えれば、第二次大戦後の介入主義の方が例外と言えます。

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新・リーダー論池上彰 佐藤優

定価:本体830円+税発売日:2016年10月20日


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