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変則往復書簡

「本の話」編集部

『男ともだち』 (千早茜 著)

小説が大好きな書店員さんたちは出版社にとって宝のような存在なのですが、この新刊が出るにあたって、営業部担当者宛に届いた一通の熱い熱い感想メールをHPに掲載させていただくことにしました。著者からの公開返信メールとあわせてお読みください。──みなさんには、ハセオのような男ともだちはいますか?

千早 茜(ちはや あかね)1979年北海道生まれ。2008年「魚神」で第21回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で泉鏡花賞を受賞し、注目を集める。2013年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞し、同作で第150回直木賞候補となる。

新井見枝香さんへ

 伝えたいことがあるから書いています。

 でも、それをそのまま書いたとしても伝わるわけはなく、言葉にはできないことの時もあり、だから私は日々ちまちまと物語をつむいでいます。

 そして、いざ物語を書きあげると、予期しなかったことが現れて、驚かされたり救われたりすることがあります。それは、読んでくれた方からの感想によるところも多いです。

 新井さんは超ベテランの有名書店員さんで、「格好いいなあ」と思っていました。今回、新井さんのすごく直球な感想をいただいて、「格好いい」に強烈な「愛しい!」が加わりました。

 なんて、まっすぐに読んでくれる人だろう。

 そう思ってから、自分もまっすぐな気持ちでこの物語を書いたことを思いだしました。

 主人公の神名は弱くて強くて、じゃじゃ馬で、イラストレーターとしても未熟で、ひたすら迷走しています。正直言って書きにくい主人公だったし、読者の共感を得られるのかどうか不安でもありました。けれど、彼女は無我夢中で自分の生き方を探している。ハセオも一見ちゃらんぽらんな上、近付いても本心を明かそうとしない男です。けれど、自分のやり方をちゃんと持っている。そんな二人のケモノを、目を逸らさず描こうと決めてちまちま書いていきました。

 座談会の時に新井さんが言った「みんな何かがあって、知ってしまったらもう嫌えなくなるんだよね」という言葉が印象に残っています。一癖ある人々がでてくる話ですが、そう思ってもらえて、久々に長編を書いたかいがあったと思いました。そして、長編でなくてはできないことも知れました。 

 どんな作品でもぶるぶると震えながら世にだしています。

 だから、伝わると本当に嬉しい。ほっとします。

 新井さん、ありがとう。

 あなたの感想でいろんなことに気付けました。

 紙の上にしか存在しなかった登場人物たちが、新井さんの中で生き生きと動いてました。

 物語を書くことは楽しいばかりではないけれど、こういう感想をもらえただけで、報われた、と感じます。そして、また次に向かえる。

 最後に「美味しそうなものがいっぱい」なのは、確かに私が食いしん坊なせいもあるけれど(笑)、主人公の神名の生きる力のせいなのだと思いますよ。併走する主人公によって、描写は自然に変わってくるのです。神名には肉が似合いますよね。

 そして、私の作品でははじめて誰も死んでおりません。

 これも、神名とハセオの生命力のせいかなあ、と思っています。

千早 茜
 

この書簡の中に登場する『男ともだち』ネタバレ座談会こちら>>
※新井さんのメールは座談会より前、千早さんのメールはその後に書かれたものです。

男ともだち
千早 茜・著

定価:1,550円+税 発売日:2014年05月26日

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