2014年にはじまった書店員・新井見枝香さんによる「新井賞」。直木賞・芥川賞と同時期に発表され、話題作を多く生み出してきたこの賞の第一回受賞作は千早茜さんの『男ともだち』(文春文庫刊)でした。プライベートでも深い親交のあるお二人の共通点とは? 公開トークショーで、ぞんぶんに楽しいお話を聞かせてくださいました。
話題の「新井賞」の誕生のきっかけを作った作品『男ともだち』
新井 私は書店員で、「新井ナイト」という本のイベントを定期的に開催しているんですが、今夜は、大阪にて、千早茜さんをお迎えしました!
千早 よろしくお願いいたします。
新井 なんで千早さんに対談をお願いしたかというお話からしましょうか。新井見枝香といえば「新井賞」ということで、第一回の受賞作が千早さんの『男ともだち』だったんですね。それを書いたひとということもありますし、関西在住ということで来てもらいました。
千早さんは、書店員からしても、意外と「レアキャラ」なんですよね。
千早 知り合った最初のきっかけは、わたしが新井さんに会いたかったからなんです。いろいろ申し訳ない気持ちになるのでわたしはあまり書店めぐりが得意じゃなくて、ほぼ行かないんですけど、他の作家さんにわたしに顔がすごく似てる書店員がいるよと聞いて「見にいきたい」という話になって。実際に会いに行ったら、新井さんに「お、レアキャラ来たねー」と言われました、初対面で(笑)。
新井 失礼だよね(笑)。2014年に、『男ともだち』が直木賞の候補になった時、候補作のなかでも、この本がわたしはいちばんおもしろかったんだけど、受賞にならなかったんですよね。そのときに、どうしても諦められなくて「新井賞」というのを初めて作ったんです。だから、たぶん、いきなり新井賞を受賞したと言われても千早さんはそんなに嬉しくなかったと思います。
千早 いやいや(笑)。新井賞はいま何回目ですか?
新井 九回目。
千早 直木賞、芥川賞のときに、新井賞と並べて売ってるんですよね。『男ともだち』の単行本刊行時に、応援してくれてる書店員さんたちとの飲み会をしたんです。その中に新井さんもいて。直木賞は落選したんですけど、いきなりツイッター上に「新井賞、受賞です」と書いてあって、「何やってるんだろう。大丈夫かな。この人、すごいことするな」と思ったんですよ。嬉しいんですけど。だって、直木三十五さんも、芥川龍之介さんも、三島由紀夫さんも、みんな死んでから誰かが名前を賞にしてるのに、生きてるうちに自分の名前を賞にしてしまう人間ってめずらしいというか、まあ、いないですよね。だから、おもしろいということで、新井さんはいろんなメディアに取りあげられています。テレビにもたくさん出演して、どんどん有名になって。一緒に歩いていると「テレビで見た!」とか、言われたりしてますよね。