病気・患者を大量生産する社会
現代の日本は大量生産・大量消費社会ですが、医療もその例外ではありません。こういうと、種々の検査機器や治療薬などの大量生産をイメージするかもしれません。しかし、見方を変えると、生産されているのは、患者であって、消費されるのは患者の身体そのものです。
がん治療でいうと、「痛い」「苦しい」といって患者が病院に来て、がんを見つけて診断をくだす。それだけでは、患者の数はかぎられます。しかし職場検診、人間ドック、さらに地域のがん検診でさまざまな装置を駆使すれば、無症状の人からもがんを発見できる。病気・患者の大量生産です。
がん以外の病気では、「消費」というイメージは少ないかもしれませんが、がんの場合には、手術で臓器をとり、抗がん剤で正常な細胞を殺すから、まさしく消費です。消費とは英語でconsumeですが、consumeにはもうひとつ「消耗」という意味があります。
現代医療は、人々の不安感を煽って検査に来させ、さらに不安感・恐怖感を助長して薬を飲ませます。いったん病名をつけられて、患者になると、心がやすまることがありません。だから、医療における消費者(consumer)というのは、自らの肉体と精神を消耗させる人、という意味にもなりかねないわけで、がんにかかっても真の消費者たるには、それ相応の知識と自覚が必要とされるのです。
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