- 2014.08.28
- 書評
佐々淳行(初代内閣安全保障室長)が見た
戦後の政治家 ベスト5 ワースト5
文:佐々 淳行
『私を通りすぎた政治家たち』 (佐々淳行 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
今回、「最後の著書」と銘打って刊行した『私を通りすぎた政治家たち』は、いわゆる「佐々メモ」に基づく政治家閻魔帳ともいうべき本です。政治家でもあった私の祖父(友房)や父(弘雄)をはじめ、幼少の頃から遭遇し、学生時代に教えを請い、官僚になってから職務上接触したさまざまな内外の政治家を取り上げています。
具体的に数えてはいませんが、ざっと百人ぐらいの内外の政治家が登場します。「職業政治家」ではないものの、「国を代表する公人」は広い意味での「政治家」であるとみなして、エリザベス女王や元駐日大使のライシャワーさんやガガーリン少佐(人類初の有人宇宙旅行者)などもリストアップしています。
憎めない左翼政治家たちもいた
よくいわれる話ですが、政治家には、「政治家」(ステーツマン)と「政治屋」(ポリティシャン)の二種類があります。権力に付随する責任を自覚し、ノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)を心得ている人は「政治家」。権力に付随する利益や享楽を優先して追求するのは「政治屋」と、私は定義しています。
手前味噌になるかもしれませんが、私の祖父や父は「政治家」だったと思います。「国益」を第一に考え、「私益」を後回しにするというのも「政治家」に必要な資質といえます。その観点から戦後日本の政治史で、ベスト5の「政治家」といえるのは、いろんな反論もあるかもしれませんが、(1)吉田茂、(2)岸信介、(3)佐藤栄作、(4)中曽根康弘、(5)石原慎太郎という名前を挙げることができると思います。
一方、国益より私益を優先したワースト5の「政治屋」といえば、(1)三木武夫、(2)小沢一郎、(3)田中角栄、(4)加藤紘一、(5)河野洋平……といった面々が私には浮かぶのです。
「要は、佐々さんはリベラルが嫌いなだけだろう」と感じる向きもあるかもしれません。しかし、そうではない。自民党内のリベラルな人は、いささか無節操で、新聞世論に迎合するだけのタイプの政治家が多かった。それに比べて、同じリベラルでも野党にいる人はちょっと違うタイプの政治家もいました。
例えば、本書には「憎めない政治家たち」という章がありますが、そこに登場するのは、不破哲三、上田耕一郎、大出俊といった、反自衛隊反警察の共産党、社会党左派の論客たちです。国会答弁でも、何度もやりあった「天敵の仲」です。
でも、こういう人たちは思想信条が首尾一貫しており、論敵ではあったけれども、どこかで心が通じ合うものを感じていました。
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