2018年1月のとある日、文京区春日にある「牛天神北野神社」を、作家・山本一力さんがたずねた。住宅街の坂の途中にさりげなく、その入り口はある。急な階段を上りきると、そこにはこじんまりと気持ちの良い、美しい神社が現れた。
時代小説に新風を吹き込んだシリーズ「損料屋喜八郎始末控え」の最新刊『牛天神』のまさに舞台となったこの由緒ある神社に、山本さんは新刊ヒット祈願に訪れたのだ。
1184年に源頼朝により創建され、牛に乗った菅原道真公の御神託により牛を守護神とするこの神社、実はプライベートでも山本家と非常に縁の深い場所だという。
「最初に来た時、ここの狛犬を見て、一緒にいたカミサンは思わず泣いたんだよ」
いったい狛犬の何が山本夫人を泣かせたのか!?
よく見ると、左の狛犬の足元には、母親の腹にむかって立ち乳を吸おうとする赤ちゃん犬が、右の狛犬の背にも、母の背にしがみつく子犬がいるのである。このあまりにけなげで可愛らしい赤ちゃん犬を目にした時の感動が、『牛天神』執筆のきっかけになったという。
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