梅の蕾がふくらみ、気持ちの良い風が吹き抜ける境内からはかつて、富士山が見えた。現在は残念ながら、眼下には住宅街とビルが見えるだけだが、当時の光景は葛飾北斎の富嶽三十六景に描かれている。※
江戸時代、参詣客が膨大になる「牛天神のぼしん参り」の日には、行きと帰りの参道が、男坂と女坂に分けられていた。江戸中から参詣客が押し寄せ、境内が人波で埋まる様子は、『牛天神』の中でも活き活きと描かれている。
現在は、学問の神様・菅原道真公のご威光と、撫でると願いが叶うといわれる境内の「ねがい牛」を目指して、受験期に大勢の人がここを訪れるという。何を隠そう実は山本一家も、熱心に牛天神参りした結果、息子たちは第一志望の難関大学に合格した。
800年以上この地で大切に守られてきた牛を撫で、『牛天神』ヒット祈願を厳かにおこなっていただいた山本さん。この日、権禰宜の石寺光弘さんから伺った、神社にまつわる興味深いお話もいずれ、多くの読者の心を震わす粋な物語になるかもしれない。
厳かな空気と、懐かしい原風景の趣が同居する境内に佇むと、江戸庶民を相手に、鍋釜から布団までレンタルする損料屋を商う喜八郎、その恋人である深川の高級料亭の女将、地元の町を守ろうと知恵をしぼる長老たちら『牛天神』の登場人物の姿が自然に浮かんでくる。
※ 葛飾北斎の富嶽三十六景に描かれている景色は、「牛天神北野神社」の公式サイトでもご覧になれます。http://ushitenjin.jp/keidai/
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