書評

“好きなもの”とダメ出しが生んだ、論理とキャラクターの両立

文: 円堂都司昭 (文芸評論家)

『キングレオの冒険』(円居 挽 著)

 さらに本書では、城坂論語という一筋縄ではいかない美少年が重要な役割を果たす。円居挽は二〇〇九年の『丸太町ルヴォワール』が単行本デビュー作であり、同作から始まるルヴォワール四部作が話題となり、ミステリ読者に存在が認知されたのだった。双龍会という私的裁判を舞台にして、龍師と呼ばれる者同士が、アクロバティックな論理だけでなく華もある弁舌で対決する。そんな設定の同シリーズでも、城坂論語という青年が異彩を放っていた。彼に限らず、本書にはルヴォワール四部作と関係がありそうな名前がちらほら出てくる。

 一方、円居挽は『キングレオの冒険』の発表と同じく二〇一五年に『シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎』、二〇一六年に『シャーロック・ノート・ 試験と古典と探偵殺し』を刊行している。日本探偵公社なる組織が日本に存在し、キングレオこと天親獅子丸という探偵に人気があると言及されるこのシリーズは、『キングレオの冒険』と地続きの世界観なのだろう。そして、探偵養成のための高校を舞台にした『シャーロック・ノート』では、上級生が弁護人、新入生が検事の役回りで論理をぶつけあう星覧仕合という裁判ゲームが恒例になっており、そこでの口上の決まり文句は「我らの祖たるシャーロックの名にかけて問う」、「我らの祖たるシャーロックの名にかけて応じる」なのだ。ホームズへのリスペクトという点でも『キングレオの冒険』と『シャーロック・ノート』は近しいところがある。

 また、先に触れた京大ミステリ研先輩後輩対談では、大山誠一郎が『シャーロック・ノート』に登場する名称について、「現衛庁」は「幻影城」(江戸川乱歩の評論集。後に同名のミステリ雑誌が発行された)、「九哭将」はドロシー・L・セイヤーズの『ナイン・テイラーズ』を踏まえたものだと指摘していた。円居は、過去の名作や他の自作にちなんだネタをちりばめる遊戯的なふるまいをしばしばみせる。

キングレオの冒険円居 挽

定価:本体790円+税発売日:2018年04月10日


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