書評

“好きなもの”とダメ出しが生んだ、論理とキャラクターの両立

文: 円堂都司昭 (文芸評論家)

『キングレオの冒険』(円居 挽 著)

 探偵と助手というと、ホームズとワトソンのコンビがまず思い浮かぶ。ミステリに親しむ入口が、アーサー・コナン・ドイル作のホームズ・シリーズだった人は多い。円居も小学三年生の時、岩波書店のジュブナイル版『シャーロック・ホウムズの冒険』を読んだという(『2014本格ミステリ・ベスト10』)。『キングレオの冒険』は、収録された五作それぞれでホームズの短編に見立てた事件が起きる趣向となっている。「赤影連盟」は「赤毛連盟」、「踊る人魚」は「踊る人形」、「なんたらの紐」は「まだらの紐」、「白面の貴公子」は「白面の兵士」、「悩虚堂の偏屈家」は「ノーウッドの建築家」へのオマージュでありパロディである。また、獅子丸は、ホームズと同じく日本の謎の格闘術バリツの使い手だ。ホームズにモリアーティ教授という好敵手がいたごとく、獅子丸に対しても事件の続発を経てやがて強敵が現れる。

 『キングレオの冒険』はこのようにホームズにこだわった内容だが、それ以外にもミステリ愛好者をにやりとさせるネタが投入されていた。「悩虚堂の偏屈家」では、ある殺人事件をめぐって日本探偵公社の伝説的な探偵・河原町義出臣と獅子丸が推理対決する。相手の老探偵は、ジョン・ディクスン・カーが生んだ名探偵ギデオン・フェル博士にちなんで和製ギデオン・フェル、河原町ギデオンと称されている設定だ。この最終話は、カーが別名義カーター・ディクスンで発表した『ユダの窓』を意識したと、著者自身が語っていた(前掲、文藝春秋BOOKS)。

キングレオの冒険円居 挽

定価:本体790円+税発売日:2018年04月10日


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