- 2018.08.06
- インタビュー・対談
<未須本有生インタビュー> 七人の素人探偵が挑む日常の謎
「オール讀物」編集部
『絶対解答可能な理不尽すぎる謎』
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
東京大学工学部航空学科を卒業後、大手メーカーで航空機の設計に携わったという経歴を生かし、骨太な航空小説を上梓してきた未須本有生さん。しかし、本作では趣をがらりと変え、七人の素人探偵が〈日常の〉を解決していく推理物に初めて挑んだ。
「もともとミステリーファンで、作家でミステリー評論家としても活躍されている小森健太朗さんとは、大学時代に知り合い、薦められた古典の名作百冊を読破したり、トリックのネタを考えて、それが実際に小説に使えるだろうか検証したりと色んなことをやっていたんです。当時はまさか自分が実際に小説を書くことになるとは思わなかったんですが……」
登場人物は小説家、映像作家、警察官僚、ワイン評論家、編集者、エンジニア、デザイナーと、いずれも異なる専門知識を持つ。持ち込まれた難題に対して、それぞれの得意分野を活かしていく展開は非常に明快だ。
「天才的な人物が一人ですべてを解き明かすのではなく、相互補完をしながら徐々に真相が明らかになっていく――実はこのスタイルとキャラクター作りに関しては、京極夏彦さんのデビュー作『姑獲鳥の夏』にはじまる一連の作品へのリスペクトがありました。主人公の京極堂は古書店主ですが、それ以外にも刑事や小説家、探偵などが登場して、警察の動員力もうまく使いながら問題の解決へと進んでいきますよね。ああいったチームものが好きで、自分でもそれを意識して書き上げました」
一方、「まず死体が発見されるところからはじまるミステリーが多すぎる」ことへのアンチテーゼから、ワイン、熱帯魚、バラといった身の回りにあるヒントを〈理不尽すぎる〉に仕立てたのもこだわりだ。
「熱帯魚はメーカーにいる頃に職場で流行って以来、もう二十年以上も飼っていますし、バラに関しては、大病をしてリハビリをしていた時に育てはじめました。専門書はたくさん出ていますが、肝心なことに限って、意外に書かれていないことが多い。作品の中に出てくる一見、複雑そうで解けないは、愛好家なら分かるけれど、普通の人には分からないといったところを、自分の経験をもとにしながらトリックに採り入れました」
ワインに関しての知識も同様で、セミナーや店舗デザインに関わった経験が存分に発揮された。実際の友人をモデルにした部分もあるが、周囲には概ね大好評で続編も期している。
「次の作品では、豪華客船を舞台に推理をしてみたいですね」
みすもとゆうき 一九六三年長崎県生まれ。大手メーカーを経てフリーのデザイナーに。二〇一四年『推定脅威』で松本清張賞受賞。『リヴィジョンA』『ドローン・スクランブル』ほか。
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