- 2016.11.04
- 書評
航空機を知り尽くした著者が書くドローン・エンターテインメント小説の決定版!
文:大森 望 (文芸評論家)
『ドローン・スクランブル』 (未須本有生 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
過日、乃木坂46の冠番組をぼんやり見てたら、夏休み企画の一環で、メンバーのひとりが、ドローン(マルチコプター)を使ったマシュマロキャッチにチャレンジしていた。これは、指導を担当したドローン芸人「谷+1。」の持ち芸で、マシュマロを載せたドローンを空中で一回転させ、飛んできたマシュマロを口で受けとめるという技。挑戦した渡辺みり愛(16歳)は短期間の練習でこの課題をクリアし、ドローンの操作性の高さを印象づけた。一発で決めた渡辺みり愛もえらいがドローンもえらい。ちなみに、この実演に使われたのは、プロペラが4個ついた、スマホで操作できるParrot AR.Drone 2.0というHDカメラ付の機種(推定)で、市価は4万円くらい。
こういう高性能ドローンの普及で空撮映像は一変。スポーツ中継や打ち上げ花火など、いままで見たこともなかったアングルの臨場感あふれる絵が毎日テレビに流れている。ドローンを使った無人宅配も実用化に向けて実験中だし、測量や送電線の点検、災害時の状況把握などにも使われていることはご承知のとおり。
このドローンを正面からテーマに据えたのが、未須本有生の第3長編『ドローン・スクランブル』。ドローン専門の小さなベンチャー企業と、日本を代表する巨大航空機メーカー3社、プラス自衛隊が、新型ドローン開発プロジェクトを軸に火花を散らす。
著者の未須本有生(1963年、長崎市生まれ)は、国産の最新鋭自衛隊機をフィーチャーした航空サスペンス『推定脅威』で2014年の松本清張賞を受賞。選考委員の石田衣良からは、「デビュー即日本一の航空小説の書き手は間違いない」と評された。
それもそのはず、著者は東京大学工学部航空学科卒業後、大手メーカーで戦闘機の設計に携わった経歴の持ち主。その知識と経験は本書でも遺憾なく発揮されている。
門外漢の私は、そもそもラジコンヘリとマルチコプタードローンがどう違うのかもよくわかってなかったんですが、本書を読んで納得。ヘリのローターは回転軸に固定されてなくて仕組みが複雑だが、ドローンは本体に複数(4個とか6個とか8個とか)のプロペラをくっつけただけ。姿勢制御も(操縦者ではなく)内蔵の超小型ジャイロセンサーが勝手にやるので、ヘリよりはるかに操作が簡単らしい。
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