『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

 しかし『スクープのたまご』は、読む前から、主人公を応援できるだろうかという不安があった。この主人公が為すべき〈いい仕事〉が何なのか、わからなかった。

 なぜなら、週刊誌編集部の話だから。

 不幸に群がり、人の秘密を暴き立て、容赦なく叩き、時にはその対象が社会的に抹殺されるまで追い込む。そんなイメージがつきまとう週刊誌編集部の話だから。

 いやあ、正直に書かせてもらうと、どうしても好きになれないのだこの手の週刊誌って。自分も書評などを寄稿している立場だから言えた義理ではないのだが、SMAP解散のきっかけを作られた恨みは忘れない。そこの話なのかあ。うーん。

 でもその一方で、大崎梢という名前は〈本の周辺〉小説に関しては信頼と実績のブランドである。本と、それを生み出す人々に対する愛情に満ちた多くの作品を何冊も届けてくれている。そして大崎梢本人は、下世話なスキャンダルやバッシング記事には眉を顰める、とても穏やかで優しい女性だ。

 その大崎梢が週刊誌編集部をどう描くのか。その興味が私にページをめくらせた。